「営業のスクリプトの作り方がわからない」「営業スクリプトを作りメリットは?」このように悩む営業責任者の方も多いのではないでしょうか。営業スクリプトを作成することで、属人化を防ぎ、個人の感覚に依存しない営業体制を構築できます。
本記事では、営業スクリプトの概要や作り方、テンプレートを解説します。営業組織の育成に悩む方はぜひ参考にしてください。
営業トークスクリプトとは、営業活動のトーク内容や話の流れをまとめた台本のことです。主にテレアポで使われることが多い傾向にありますが、対面営業でも営業トークスクリプトを活用する機会があります。
スクリプトを整える目的は、属人的な営業スタイルを減らし、誰でも一定水準の提案ができる状態をつくることにあります。新人が初日から迷わず話せるようになり、チーム全体の営業パフォーマンスも安定していきます。
成果を出し続ける営業組織は、個人の経験や勘ではなく、スクリプトを通して会話の質を磨いています。つまり、営業スクリプトは担当者を縛るルールではなく、再現性のある成果を生み出すための「仕組み」として活用することが大切です。
営業トークスクリプトの必要性は理解していても、実際に形にするとなると、時間や人員の確保などハードルを感じることもあるでしょう。とはいえ、スクリプトは一度整えておくことで、長期的に営業組織を支える重要な資産になります。
ここでは、営業トークスクリプトを作成する主なメリットを3つ解説します。
トークスクリプトは、個々の営業ノウハウを共有可能な形に整理し、チーム全体の営業品質を一定水準にそろえるための有効な手段です。スクリプトが整っていれば、誰が対応しても同じ水準の提案ができる組織体制をつくれます。
一方で、スクリプトがない組織では、担当者によってトークの質に差が出やすく、結果としてトップセールスに依存した不安定な構造になりがちです。とくに「なぜ売れるのか」というトップの感覚的な強みは、本人も明確に言語化できていないことが多く、他メンバーへの展開が難しくなります。
トークスクリプトを導入することで、成果の出る行動パターンをデータに基づいて言語化・構造化し、チームの共通財産として蓄積できます。たとえば、成果を出す営業担当の商談を分析すると、「課題ヒアリング前に相手企業のプレスリリースに触れている」「顧客の発話比率が7割を超えている」といった共通点が見えてきます。
こうした行動をスクリプトの流れに落とし込むことで、営業の品質を標準化し、再現性の高い営業組織を築くことができます。
整備されたトークスクリプトがあると、担当者は「次に何を話せばいいか」「どんな切り返しをすればいいか」を常に把握した状態で商談に臨めます。経験の浅い社員でも、会話の流れをつかみながら落ち着いて顧客対応ができるようになります。
とくにテレアポやインサイドセールスでは、想定外の質問や反論が頻繁に起こり得ます。準備がないまま対応すると、不安が声やテンポに表れ、相手に頼りなさを感じさせてしまうことがあります。
その点、あらゆる分岐を想定したフローチャート形式のスクリプトを持っていれば、担当者は「この状況ならこう答える」という判断軸を明確に持てます。たとえば、顧客に「今は忙しい」と断られた場合でも、「承知いたしました。ちなみに皆様、〇〇の業務でお忙しいことが多いのですが、△△様も同様でいらっしゃいますか?」といった一言を自然に返すことができます。
こうした成功体験の積み重ねが、大きな自信へとつながり、成果を出せる営業マンへの成長につながります。
トークスクリプトは、新人教育を体系的に整えるうえで欠かせない仕組みです。属人的な指導を減らし、誰が教えても同じ基準で育成できる環境をつくれます。
新人教育がOJT任せになると、指導内容が人によって異なったり、「見て覚える」だけの非効率な状態に陥りがちです。その結果、新人ごとに営業品質の差が生まれ、チーム全体の成長スピードが鈍化してしまいます。
スクリプトを教育の軸に置けば、「何を」「どの順番で」教えるべきかが明確になり、育成の全体像を共有できます。新人も自分がどの段階にいるのかを把握しながら学べるため、理解の定着が早まり、現場デビューまでの期間を短縮できます。
将来、安定して成果を出せる営業人材を育てるためにも、トークスクリプトを活用した研修設計が重要です。
下記の資料では、基本的なセールススキルや顧客対応の方法について解説しています。新人教育にも役立つ内容となっておりますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
営業トークスクリプトは、手順を踏んで設計することが重要です。どれか一つを省略してしまうと、ヒアリングの焦点がずれたり、顧客の課題と提案内容が噛み合わなくなるリスクがあります。こうした失敗を避けるためにも、以下の手順で作成を進めていくと良いでしょう。
成果につながるトークスクリプトづくりは、最終的なゴール(受注・成約など)から逆算して設計することが基本です。まず「この会話の終着点はどこか」を明確にしたうえで、その達成に向けた中間ゴールを各フェーズごとに定義します。
たとえば、通話のゴールを「アポイント獲得」ではなく、「顧客に自社の課題を言語化してもらうこと」に設定したとします。この場合に追うべきKPIは、課題ヒアリング数や情報送付の承諾率など、顧客理解の深さを測る指標になります。成約率だけを追うと、担当者が短期的な結果に偏り、対話の質が下がるリスクがあります。
このようにゴールを明確にすると、スクリプトも自然と顧客理解に重きを置いた構成に変わります。製品説明を急ぐのではなく、相手の現状や課題を掘り下げる質問を中心に組み立てることで、信頼関係の土台を築けます。
すべての通話でアポイント獲得を狙うのではなく、営業プロセスを「受付突破」→「信頼関係の構築」→「課題の深掘り」→「商談化」と段階的に分け、それぞれにゴールとKPIを設定しておくと、担当者は一つひとつの対話に集中できます。
誰に向けた営業かを定義するターゲット設定は、顧客に信頼してもらうためのトークスクリプトを作るうえで不可欠な工程です。たとえば、下記の例のように業界や役職ごとにトークスクリプトを作成することで、臨機応変に対応できます。
| 【ターゲット例1】 SaaS業界・情システム管理の部長職 セキュリティ要件や既存システムとの連携を懸念→「大手金融機関と同レベルのセキュリティ基準をクリアしており…」といった権威性や事実で不安を払拭するフレーズを用意 |
| 【ターゲット例2】 製造業・工場長 長年使い慣れた既存設備への愛着が強い→「その価値を活かしつつ、IoTで稼働データを可視化することで…」と、相手の価値観を尊重しつつ新しい価値を提案するアプローチを準備 |
このようにスクリプトを成果につなげるには、想定する相手を明確にしたうえで、役職や業界ごとに複数の会話パターンを設計することが欠かせません。
情報システム部門の責任者、人事部長、経営層など、相手の役職が異なれば、関心を持つテーマ、課題の切り口、そして響く言葉はすべて変わります。同じ製品を提案しても、顧客にとっての価値が異なるため、会話の展開はまったく違ってくるからです。
まずは誰に向けて話すのかを明確にし、その人の視点から逆算して具体的な会話パターンを組み立てることが重要です。
優れた営業トークは、話すことではなく聞き出すことから生まれます。顧客理解を深めるためには、あらかじめ段階ごとにヒアリング項目を整理しておくと効果的です。
| ヒアリング項目 | 具体例 |
| 現状把握 | 「現在、〇〇の業務はどのような方法で進めていらっしゃいますか?」 |
| 課題顕在化 | 「その中で、特に課題と感じていらっしゃる点はございますか?」 |
| 未来への示唆 | 「もし、その業務時間を半分に削減できるとしたら、どのような新しい取り組みに着手されたいですか?」 |
顧客自身が課題を言語化できていないケースは多くあります。的確な質問を投げかけることで、相手が自分の状況を整理し、課題を自ら見出せるようになります。
成果を上げている営業担当は、ヒアリングを通じて必ず顧客のペイン(解決したいと感じている悩みや不満)を掘り起こしています。トップセールスの会話を分析し、そこに含まれる質問をスクリプトへ落とし込むことで、チーム全体の対話力を底上げできます。
トークスクリプトは、会話全体を整理する「フローチャート」と、具体的な言い回しを記載した「台本」を組み合わせて作成します。
たとえば、以下のように使い分けます。
※一般的に後述のトークスクリプト作成ツールや、マインドマップを活用して作ります。
| 【フローチャート】 分岐例受付突破の場面で、担当者名を尋ねて「不在です」と返された場合、「A:戻り時間を聞く」「B:伝言を依頼する」「C:資料送付を提案する」といった複数の選択肢へ分岐させ、それぞれのトーク例を用意する |
| 【台本】 例フローチャートの各分岐点に、「業界No.1の〇〇社様にもご導入いただいており…(権威性)」のような、顧客の感情を動かす「感情トリガー」となる鉄板フレーズを記載しておく |
フローチャートで会話の分岐を整理しておくと、「興味あり」「今は忙しい」「他社を使っている」など、顧客の反応に合わせて次の対応を即座に判断できるようになります。さらに、各分岐点に具体的な言い回しを台本として組み込むことで、誰でも安定したトーク品質を保ちやすくなります。
結果として、新人でも迷わずに対応でき、属人化を防ぐ体制づくりにつながるでしょう。
営業トークスクリプトといっても、営業プロセスの段階によって内容は大きく変わります。
たとえば、受付突破の段階ではまず「信頼を得ること」が最優先です。一方、アポイント獲得の段階では、共感をベースに「自社が課題をどう解決できるか」を端的に伝える必要があります。
ここでは、営業のフェーズ別にトークスクリプトのテンプレートを紹介します。
受付を突破するには、売り込みではなく、担当者につないでもらうための誠実な依頼姿勢が重要です。そのためには、要件を簡潔にまとめ、具体的に伝えることが欠かせません。
受付担当者を関門ではなく協力者と捉え、丁寧なコミュニケーションを心がけることで、会話はスムーズに進みやすくなります。以下では、NG・OKそれぞれのトーク例を紹介します。
| NGのパターン:お世話になっております。株式会社〇〇の田村と申します。新サービスの件で、営業のご担当者様をお願いいたします。(用件と相手が不明確で、典型的な営業電話だと思われる) |
| OKのパターン:お世話になります。私、株式会社〇〇の田村と申します。御社のWebサイトで拝見したECサイトの事業につきまして、ぜひ情報交換をさせていただきたく、こちらの事業責任者様にお繋ぎいただけますでしょうか。(具体的な用件と、事前準備をした姿勢を示す) |
また、訪問や架電前には営業先の情報を事前に調べ、「どのような目的なら時間をいただけるか」を整理しておくことが大切です。
アポイントを取るコツは、押し切ることではなく、相手に「この人と話す時間は意味がありそうだ」と感じてもらうことです。そのためには、会話を通じて相手の課題に共感し、「話してみたい」と思ってもらえる流れをつくることが大切です。
以下の3ステップを意識すると、自然に次の打ち合わせへつなげられるでしょう。
| 1.課題をヒアリングする | 集客という業務に関して、皆様よく「何から始めていいかわからない」といった点に課題をお持ちなのですが、御社ではいかがでしょうか? |
| 2.共感し解決後のイメージを伝える | やはりその点でお困りなのですね。もしその課題が解決されれば、売上が安定するといった効果を見込めるかと存じますが、いかがでしょうか。 |
| 3.価値を提案し、面談を打診する | じつは、同様の課題を解決した他社様の成功事例がございます。もしよろしければ、その事例を交え、より詳しいご説明の機会を30分ほどいただけませんでしょうか。 |
アポイント獲得は、相手を動かす“説得”ではなく、納得の積み重ねです。一つひとつの会話で信頼を得ながら、自然に次のステップへ導く意識を持ちましょう。
クロージングは、単に商談の約束を取る場ではなく、次回の打ち合わせを有意義にするための期待値調整のプロセスです。目的は、相手に「次に何を話すのか」「どの段階まで検討を進めるのか」を明確に共有することにあります。
以下は、クロージングを進めるためのトークスクリプトのテンプレートです。
| 決裁権の確認 ありがとうございます。当日は、もし可能でしたら最終的にご判断をされる責任者の方にもご同席いただけますと、皆様にとって一度で済む有意義な時間になるかと存じます。 |
| 予算感の確認 |
| 当日のご提案をより具体的にするため、差し支えなければ、ご予算感をお伺いできますか?ご予算に合わせて、御社への提案資料を作成いたします。 |
クロージングは押し切りではなく、相手と目的をそろえるための確認作業です。商談をより有意義なものにしたいという姿勢が伝われば、相手も良い印象を持ってくれるでしょう。
ここでは、営業トークスクリプトの作成に効果的なツールを紹介します。基本的にどのツールも感覚的に使いやすい傾向にありますが、使いやすい以外にも、視覚的に見やすい、社内で共有しやすいなどの観点で選ぶことも重要です。
Microsoftが提供するVisioは、視覚的に扱いやすいツールです。豊富なテンプレートから、見やすいフローチャートのトークスクリプトを作成できます。共同作業もできるため、責任者が全体像を構築し、トップセールスにテコ入れしてもらうといった活用方法もあります。
図形のバリエーションも豊富なので、会社の雰囲気にマッチしたトークスクリプトをデザインできるでしょう。
Cacooは、複数人で共同編集できるオンラインホワイトボードツールです。チームで迅速にスクリプトを作成・改善でき、ホワイトボード内でチャットやコメントでコミュニケーションも取れます。
テンプレートや図形も豊富なので、視覚的にもわかりやすいツールといえるでしょう。また、GoogleドライブやSlackなどの外部ツールとも連携できます。視覚的に整理しながらスクリプトを磨きたいチームにとって、使いやすく汎用性の高いツールです。
UKABUは、営業に特化したオンラインツールです。商談率の向上や営業育成コストの削減など、さまざまな効果が期待でき、実際に営業オペレーションの品質向上や受注件数が増えた事例もあります。
もちろんトークスクリプト作成にも活用できます。ピックアップした情報からどのようなスクリプトの流れにするのかを支援してくれる機能があります。
ここでは、作成したトークスクリプトを実際の営業現場で活用し、成果を最大化するための具体的なコツを紹介します。
トークスクリプトを使うときは、台本を読むような口調にならないよう注意が必要です。スクリプトはあくまで話の流れを整理するためのガイドであり、読むものではありません。
棒読みになってしまう原因の多くは、「セリフを完璧に覚えよう」とする意識にあります。重要なのは流れと要点だけを頭に入れ、相手の反応に合わせて言葉を選ぶことです。
たとえば、会話の途中で相手企業のWebサイトに触れたり、最近のニュースを一言挟んだりするだけで、やり取りが一気に自然になります。用意したスクリプトに自分の言葉を混ぜていくことが、信頼を生む営業トークの基本です。
どれだけ精密に作り込んだスクリプトでも、実際の商談では想定外の質問や反応が必ず出てきます。その場で迷わず対応するために、基本のトークフローとは別に想定問答集(FAQ)を用意しておくと安心です。
たとえば、「他社と比較して価格はどうか?」「その機能の仕様は?」「導入実績はどの業界が多いか?」といった質問は、多くの商談で聞かれる可能性があります。
実際のやり取りで出てきた質問を随時追加し、簡潔でわかりやすい回答をいくつか準備しておくと、会話の流れを止めずに答えられます。こうした対応の積み重ねが、相手に「この担当者は信頼できる」という印象を与えます。
どれほど完成度の高いトークスクリプトを用意しても、決裁権を持たない相手では商談は前に進みません。早い段階で、社長・部長・事業責任者など、判断権を持つ人物、またはその意思決定に影響を与えるキーマンへ接点を持つことが重要です。
たとえば、受付突破の段階で「担当者の方いらっしゃいますか?」と聞くよりも、「〇〇の件で、事業責任者の方につないでいただけますか?」と具体的に伝えるだけで、対応が変わるケースがあります。また、ヒアリングの終盤では、「本日の内容を前に進める場合、どなたにご確認いただく形になりますか?」と尋ね、決裁の流れを把握しておくことも大切です。
こうしたやり取りをスクリプトに組み込むことで、商談の流れが途中で止まらず、確実に意思決定者に届く仕組みを作ることができます。
Grand Centralは、大手企業からスタートアップまで、多様な組織の営業改革を支援してきました。属人化の解消、営業プロセスの再設計、KPIマネジメントの仕組み化に加えて、実際の商談で使えるトークスクリプトの設計や改善にも対応しています。
以下では、Grand Centralが提供するサービスと、これまでの支援実績を紹介します。
Grand Centralが提供しているセールスイネーブルメントとは、支援先の営業メンバー全員が成果を創出できるよう、Grand Centralが組織開発のコンサルティングや研修を実施するサービスです。
たとえば、トップセールスに成果を依存している属人化、スキルのばらつきなど、課題に合わせて最適な支援を行なっています。
営業コンサルティングを提供している会社は多々ありますが、弊社Grand Centralは下記の3つの特徴を強みとし、企業様の課題解決に全力を注いでいます。
キーエンスやオープンハウス出身のコンサルタントが営業組織の課題を特定し、独自のメソッドでカリキュラムを策定します。属人的ではない強い営業組織の構築をサポートします。
Grand Centralはこれまで、株式会社ドコモや朝日新聞社などさまざまな企業を支援してきました。中でも今回は、日揮グローバル株式会社様の営業支援の実績を紹介します。
日揮グローバル株式会社様は、新商品を販売するために営業方法などを模索していたものの、未経験の領域のため困難な状況にありました。
外部委託先を探している際にGrand Centralにご依頼いただき、営業戦略の構築からアポイントの獲得まで伴走型で支援を実施。その結果として、安定して質の高いアポイントを獲得できるようになりました。
Grand Centralでは、新規事業の営業戦略の構築から、既存の営業組織の課題解決まで、さまざまな支援を実施しています。営業体制の強化を検討されている方は、ぜひご相談ください。
トークスクリプトを作成する際は、「ゴールの設定 → ターゲットの明確化 → ヒアリング項目の設計 → フローチャート化」という流れを一貫して設計することが重要です。この手順を踏むことで、誰が見ても理解できる再現性の高いスクリプトを構築できます。
まずは、自社で成果を上げているトップセールスのトークを分析し、成功につながっている要素を抽出してみてください。そこから共通点を整理すれば、実践に根ざしたスクリプトの骨格が見えてきます。
もし何から始めるべきか迷った際は、Grand Centralにご相談ください。キーエンスやオープンハウス出身の営業コンサルタントが寄り添い、成果を創出できるように支援を行います。