「SFAを眺めるだけで、具体的な改善策が思いつかない」「データ分析を行っても全く成果に結びつかない」など、営業活動のデータ分析にお悩みではないでしょうか。
営業プロセスのボトルネックを取り除き、強い営業組織を作るためには、データ分析に基づいたPDCAサイクルの回転が欠かせません。
本記事では、成果に直結するデータ分析の5つのフレームワークや、KPI設計の方法、分析時の注意点をまとめています。
これらを参考にデータ分析を実践すれば、データドリブンな意思決定を行い、成果を出し続ける営業組織へ変えられるでしょう。
営業組織全体で効率的に成果を出し続けるためには、データ分析による振り返りと改善を繰り返すことが重要です。
データ分析が必要な理由をひとつずつ紹介します。
営業プロセス全体のどこにボトルネックがあるかを特定し、改善の優先順位を決定するためには、データ分析が欠かせません。
未熟な営業組織は「売上が下がった」という結果だけを見て、とにかく架電件数を増加したりトークスクリプトを場当たり的に変更したり、誤った対策にリソースを投じがちです。
しかし、データ分析を行えば「商談化率は高いが、提案からクロージングへの移行率が極端に低い」といったように、課題が数値で可視化されます。
ピンポイントでボトルネックを特定できるようになれば、対策を講じるべきポイントが絞り込まれ、効率的な改善が可能になります。
データ分析は、トップ営業が持つ成功のノウハウを言語化でき、営業スキルの属人化防止にも効果的です。
トップ営業のスキルやノウハウが属人化していると、特定の社員が休職・退職すれば、売上が急激に落ちるリスクを常に抱えることになります。
精度の高いデータ分析を行えるようになれば、たとえば「トップ営業の商談時間は平均〇分」「特定の顧客層にこの質問を必ずしている」といった共通の成功パターンが明確になるでしょう。
成功パターンを営業プロセスやトレーニングのカリキュラムに落とし込むことで、新人や中途採用も含めた全員のレベルを引き上げることにつながります。
データ分析を活用することで、顧客の購買履歴や行動パターンから潜在ニーズを把握し、的確な提案が可能になります。
SFAやCRMに蓄積された以下のような顧客データを分析すれば、「どの製品に興味があるのか」「どのタイミングで購入を検討しているのか」といった具体的なニーズを客観的に理解できるようになります。
データを分析すれば「この導入事例を追加すれば、お客様がまだ気づいていない自社の課題の深刻さや解決の必要性を理解していただける」といったように、根拠を備えた提案もできるようになります。
結果として、成約率の向上や長期的な信頼関係の構築につながります。
過去のデータに基づいて案件の進捗や受注率を客観的に分析することで、受注予測・売上予測を高い精度で行えます。
データ分析を活用できていない場合、営業活動の予実管理は、担当者の主観的な感情や希望的な観測に左右されがちです。
「今月はもう無理かもしれない」「多分来週には決まる」といった根拠のない予測は、経営判断を誤らせかねません。
誤った予測に基づいて不必要な人員採用やサービスの中断を決定してしまうと、企業の成長が停滞してしまうリスクがあります。
データ分析を導入すれば、「このカテゴリの案件は、キーパーソンとの面談率が〇%を超えると受注率が急上昇する」というような客観的なデータに基づいて、受注確率を算出できます。
予測の精度が向上すれば、安定した経営戦略にもつながるでしょう。
営業担当者の行動を数値で評価できれば、効果的なマネジメントが行えるようになります。
「とにかくやる気を出そう」といった精神論や、根拠のない経験則に基づいた指導では、メンバーは何をどう改善すればよいのかわからず、モチベーションの低下を招きかねません。
データ分析を活用すれば「アポイントの獲得件数は多いが、平均商談単価が低いのでこう改善しよう」といった、具体的なコーチングができるようになります。
指導の質が向上すれば、メンバーも実力をつけやすく、組織全体のパフォーマンスの引き上げにつながります。
営業データ分析は「膨大なデータを扱う高度な作業」というイメージを持たれがちですが、基本的な3つの手法を押さえるだけでも多くの課題を発見できます。
現場ですぐに使える、基本的な分析の考え方を紹介します。
動向分析は、外部環境や市場の変化を把握するための分析です。
営業成果は自社の努力だけでなく、業界の需要変動や競合状況、経済環境によって大きく左右されます。具体的には、以下のような要因が考えられます。
そのため自社の営業成果を正しく把握するには、これらの外的要因が自社の営業活動にどのような影響を与えるか理解する必要があります。
動向分析のデータから、自社の営業活動における異常値や傾向が、外部要因によるものか、内部要因によるものかを下記のように判断できます。
外部要因を知ることで、自社を取り巻く環境の理解が進み、誤った内部改善に走るリスクを防げます。
要因分析は、「なぜその結果になったのか」を解き明かすための分析です。
営業成果の良し悪しは、複数の要因が組み合わさって生じます。要因分析を行うことで、営業活動に影響を与えている原因を切り分け、成功・失敗要因を発見します。
たとえば、商談化率・受注率を分析する場合、以下のようなポイントを確認しましょう。
こうした要素を確認することで、以下のように結果を生んだ具体的な要因を深掘りできます。
緻密な要因分析を行えば、改善の優先順位を適切に判断できるようになります。
検証分析は、立てた仮説が実際に正しいかどうかをデータで確認する分析です。
営業活動は仮説と検証の繰り返しで精度が上がるため、データ分析と検証による振り返りが欠かせません。
たとえば、以下のような形で営業活動の内容を検証します。
これらの仮説をデータに照らし合わせ、正しいかどうかを検証します。検証分析のポイントとして、以下のような点に注目しましょう。
検証分析を繰り返すことで、非属人的な再現性のある営業戦略が構築できます。
営業データ分析の基本的な手法と考え方(動向・要因・検証)を覚えたら、より具体的なフレームワークに落とし込み分析を進めましょう。実践的な5つのフレームワークを紹介します。
KPI分析は、目標達成に向けて必要な指標を分解し、進捗を管理するための基礎となるフレームワークです。
最終成果だけを追うのではなく、その前段階で発生する行動やプロセスを複数のKPIとして設定すれば、ボトルネックを早期に特定し改善策を講じられるでしょう。
たとえば売上をKGIとする場合、「受注数」「商談数」「商談化率」「提案数」「アポイント獲得率」などをKPIに設定します。
これらのKPIを営業プロセスとして数値化し管理することで、KGIの達成や未達の理由がどの段階にあるのかを客観的に把握できます。
行動分析は、トップ営業の行動パターンを明らかにし、営業組織全体に展開するためのフレームワークです。
成果が出る理由を特定できれば、営業チームに共有して組織全体のレベルアップを図れます。
商談分析は「なぜ特定の商談は成功し、別の商談は失注したのか」を明確にするためのフレームワークです。
商談ログや聞き返しの内容、提示した提案内容などを比較すると、担当者によるプロセスの違いや提案の質の差が浮かび上がります。
たとえば、受注に至った案件は以下のような特徴があったとします。
こうした成果の差を生む行動が特定できれば、失注案件で見られやすい兆候も明らかになります。
商談分析は、提案精度の向上やトレーニングの方向性の決定につながる重要な分析です。
顧客分析は、自社にとって価値の高い顧客を見極めるためのフレームワークです。
購買履歴や契約継続率、単価、問い合わせ内容などを整理すると、優良顧客の共通点が明確になります。
たとえば業種・規模・課題といった属性別に顧客情報を整理すると、「どこの市場で勝ちやすいのか」「どのような課題を持つ顧客と相性が良いのか」を判断でき、ターゲティングやプロダクト改善につながります。
営業活動を「誰に何を届ければ最も成果が出やすいか」に集中することで、リソースを効率的に使えるようになるでしょう。
パイプライン分析は、案件がどの段階で止まっているのか、あるいはどこが弱いのかを捉えるフレームワークです。
商談ステージごとの件数・転換率・滞留期間を可視化できれば、組織全体の流れの悪いポイントが明確になるでしょう。
たとえば「提案までは順調に進むが受注率が低い」「初回商談までの転換率が全体的に落ちている」といった状況がわかれば、改善の方向性がはっきりします。
各営業プロセスの流れを把握できていれば、ボトルネックの早期発見が可能になり、問題が深刻化する前に具体的な施策を打ち出せます。
営業データ分析に使うKPIは、多ければよいというものではなく、目標達成に必要な因果関係が強い指標だけに絞ることが重要です。
営業活動の状況を把握するうえで、有効な3つのKPIを紹介します。
営業案件数とは、現在進行形で進められている見込み顧客との商談や、プロジェクトの総数を指します。
営業案件数は、商談化率や受注率といった営業効率を示す指標の母数でもあります。そのため営業案件数が少なければ、どれだけ受注率が高くても、売上目標を達成するのは難しくなるでしょう。
営業案件数を見る際は、単に営業案件数が多いかどうかだけではなく、以下のような案件の背景まで捉えることが大切です。
案件数をKPIに設定することで、営業チームの活動量や、新規リード獲得の取り組みが適切に機能しているかを測る目安になります。
成約率(受注率)は、商談を行った案件のうち、実際に契約や受注につながった案件の割合を示す指標です。
リードの質やヒアリングの深さ、提案内容など、多くの要因が複雑に関係して決まるため、営業チームの実力が表れやすい指標ともいえるでしょう。
分析の際は、全体の成約率・受注率だけを見るのではなく、チャネル別や業種別、担当者別などの項目に分けて数値を比較します。
項目別に比較すると、より深く分析できるため、特定の成功パターンを横展開したり、成績の低い特定の要因に絞ったりと改善策を講じられます。
成約率・受注率をKPIに設定すれば、どこに組織の勝ちパターンがあるのかが明確になり、リソースの効率的な配分にもつながるでしょう。
リードタイムとは、初回接触から受注までにかかった期間のことです。商談化のスピードや検討ステージの長さを可視化できるため、営業プロセスの効率性を評価するうえで欠かせない指標といえるでしょう。
リードタイムが長くなると、案件管理が複雑になるだけでなく、顧客の熱量が下がり、受注率が悪化するでしょう。
逆に、早期の接触や迅速な提案によってリードタイムが短縮されると、一般的に受注率は向上します。
リードタイムをKPIに設定すれば、ボトルネックとなっている商談ステージを特定し、プロセスの効率化を図れます。
営業データ分析のフレームワークを実践するうえで、役立つ代表的なツールを、5種類紹介します。重要なのは、自社の課題に対して、どのツールをどう使い分けるべきか理解することです。
Excelやスプレッドシートは、手軽に扱いやすく、小規模データの集計・分析に最適なツールです。
簡単な操作で案件一覧や顧客リストを整理でき、ピボットテーブルを使えばチャネル別の件数や商談化率もすぐに抽出できます。
中小規模の組織やスタートアップでは、まずはExcelで分析基盤を整えるケースも多く、分析の型づくりにも適しています。
特別なシステムを導入する前に、データの整形を行う土台として使うこともでき、自由度の高いツールです。
SFA(セールスオートメーション)は、案件管理や活動履歴の蓄積を自動化するツールです。
営業担当者が行った電話やメール、訪問、商談内容などが時系列で記録されるため、分析に必要なデータの取りこぼしを防げます。
また、組織全体で案件のステータスを管理できるようになるため、営業担当者間での情報共有が円滑になり、同じ目線で数字を語れるようになるでしょう。
SFAは営業活動をデータで管理するうえで、中心的な役割を果たすツールといえます。
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)は、顧客単位で情報を整理し、問い合わせ履歴や購買履歴などを一元管理するツールです。
SFAが受注までのプロセスなど、営業活動の記録に重点を置くのに対し、CRMは受注後の顧客との関係管理に強みがあります。
顧客属性や課題、過去のコミュニケーションを整理できるため、CRMからは下記のようなデータを抽出できます。
CRMは、既存顧客との関係を強化し、LTV(顧客生涯価値)の最大化に貢献するための重要なツールです。
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールは、SFA・CRM・マーケティングデータなど複数のデータを統合し、ダッシュボードとして可視化するためのツールです。
初期設定を行えば、基本的には自動で数字が更新されるため、手作業でレポートを作成する必要がなくなり、分析に集中できます。
また、組織規模が大きくなるほど、データが点在しがちになるため、規模の大きい会社ほどBIツールの価値が高くなります。
BIツールそのもので分析を行うわけではありませんが、複雑に絡み合う営業データを統合し、作業を効率化するために必要なツールです。
商談のAI要約ツールは、商談の音声を自動でテキスト化し、課題・要望・競合名・ニーズ領域などを抽出してくれるツールです。
近年オンライン商談が増える中、AI要約ツールはSFAや電話と連携するだけで、商談内容の記録と分析を効率化してくれるため普及が進んでいます。
担当者ごとのヒアリング内容や提案軸の違い、顧客の反応などを比較できるため、商談の改善点を見つけるには非常に便利です。
また、トップ営業の提案方法やヒアリング技術を統計的にまとめ、OJTやロールプレイングの質を向上させるためにも、商談のAI要約ツールは活用できます。
営業データの分析は組織の改善に大きく寄与する一方で、扱い方を誤ると現場の負担を増やしたり、経営判断を誤ったりするリスクがあります。
実務でとくに注意すべきポイントを解説します。
どんなに正確なデータがあっても、そのデータを誤って解釈してしまうと、誤った意思決定につながります。
データの読み解き方において、とくに注意すべきなのは、相関関係と因果関係の混同です。
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意味 |
例 |
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相関関係 |
2つの事柄が一緒に変動する関係 |
身長と体重は一緒に増える傾向がある |
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因果関係 |
一方が原因となって、もう一方の結果を引き起こす関係 |
勉強時間を増やせばテストの点数が上がる |
たとえば、「受注率の高い担当者はメールの返信が早い」という相関関係があったとします。
このとき「メールの返信を早くすれば受注率が上がる」と早合点し、スピードだけを目標に設定すると、内容がおろそかになり、顧客対応の低下につながりかねません。
「受注率の高い担当者は顧客の信頼を得るために、内容の質や的確さに加えて返信の速さにも注力している」といった因果関係を理解する必要があります。
データ分析では相関関係だけで判断するのではなく、なぜそうなるのか背景まで掘り下げて考えることが重要です。
データ分析を本格的に進めるには、ツールの導入・運用にかかる金銭的コストや、人材確保のための人的コスト、分析を行うための時間的コストなど数多くのコストが発生します。
SFAやCRMの導入には初期費用だけでなく、月額のライセンス料や保守費用が継続的にかかります。
また、単にツールを導入するだけではなく、営業プロセスに合わせたカスタマイズや、メンバーが正しくデータを入力するための運用ルールの策定も必要です。
データ分析の専門知識を持つ人材の確保も課題になるでしょう。
社内にデータ分析のスキルを持った人材がいない場合、外部から採用するか一から育成する必要がありますが、いずれも時間とコストを要します。
こうした初期投資を回収するには、一定の期間が必要となるため、経営層の理解と中長期的な視点が必要になります。
KPI管理を徹底するあまり、担当者が数字を作るための行動をとってしまい、顧客との関係が悪化するケースがあります。
数字を作るための行動の例として、以下のようなものが挙げられます。
このように顧客の状況を無視した強引な営業に走ると、長期的な信頼を損ない、会社の悪評判が広がってしまいます。
データ分析を行う際は、短期的な数値目標だけでなく、顧客満足度(CSAT)やLTV(顧客生涯価値)といった、中長期的な指標も組み合わせた評価基準を設けましょう。
データ分析の精度が上がるほど、信頼関係や顧客の潜在的な将来性といったデータ化できない価値を軽視しがちです。
営業活動は、すべてがデータとして数値化できるわけではありません。たとえば「商談化率が低い顧客は早めに見切りをつける」という判断は、データ上は合理的です。
しかし、決裁プロセスが複雑な大企業であれば、将来的に大型案件の受注につながる可能性があるかもしれません。
データと現場の洞察をバランスよく扱うことが、正しい意思決定につながります。
営業活動にデータ分析を取り入れたいものの、「どのようにSFAやCRMを構築すればよいかわからない」「データ分析が成果に結びつかない」といった課題に直面する企業は少なくありません。
Grand Centralの「セールスDX」は、キーエンスやSalesforceなどの営業管理モデルを基に、お客様の営業フローに最適化したCRM・SFAを構築し、営業活動のデータ分析を支援します。
さらにBIツールによるデータの可視化や、導入後の定着化コーチングまで一貫してデータ分析のサポートを行います。
営業データの分析に関するお困りごとがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
(株)ミライクさまでは、Salesforceの0→1構築と最適なデータ設計を行い、営業情報の属人化を解消しました。
また、戦略的な意思決定を可能にする分析基盤の構築も行っています。
同社は営業部門の立ち上げに際し、営業情報の属人化という課題に直面していました。しかし、ナレッジを持つ人材が社内にいなかったため、Grand Centralへ「セールスDX」をご依頼いただきました。
ご支援では、ミライクさまの成長フェーズに合わせた伴走型支援を徹底。弊社コンサルタントが多様な分析視点や他社ナレッジを提供し、レポート作成のノウハウも指導することで、データ活用の文化を醸成しました。
加えて、取り組みを通じて、Salesforce上で流入経路ごとのリード獲得単価や、商談単価を正確に把握できるように。これにより、マーケティングのPDCAサイクルが確立され、全体の営業コストを着実に削減するという最大の成果につながっています。
営業活動でデータ分析を活用すれば、ボトルネックの特定や営業スキルの属人化防止、顧客ニーズの把握が可能になります。
SFAやCRMといったツールでデータを統合し、KPI分析や行動分析、商談分析などのフレームワークを実践することで組織全体の営業力を引き上げられます。
ただし、相関関係と因果関係の混同や、データに現れない信頼関係の軽視には注意が必要です。
データによる定量的な情報と現場の洞察による定性的な情報をバランスよく扱うことが、強い営業組織を構築するためのカギになります。
Grand Centralでは、 営業データの分析支援や各種ツールの導入はもちろん、戦略設計や営業代行といった幅広い営業活動をサポートしています。
営業データの活用方法や、データ分析の定着化に課題を抱えている場合は、ぜひお気軽にご相談ください。