営業資料の作成に時間がかかるものの成果に結びつかないといった課題は多くの企業が抱えています。担当者による資料の質のバラつきや、改善を試みても上がらない契約率は、事業成長の大きな悩みどころです。
この記事では、顧客の意思決定を促す戦略的な視点から、成果に直結する営業資料の基本構成まで体系的に解説します。記事を最後まで読めば、営業資料を単なる説明ツールから戦略的資産へと変えるための実践的なヒントが見つかるはずです。
ここでは、成果の出る営業資料を作成するための基本となる3つの基本的な考え方を解説します。
成果の出る営業資料を作成するには、まず「誰が読むのか」を具体的に想定することから始めます。目の前の担当者だけではなく、稟議に関わる全員が最終的なターゲットです。
法人営業では、営業担当者が直接会えない決裁者や利用部門が、共有された資料だけを見て意思決定を進めるケースがあります。そのため資料は、それぞれの立場の人がもつ疑問に先回りして答える必要があります。
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立場 |
想定される疑問の例 |
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現場担当者 |
・日々の業務はどれだけ楽になる? ・導入後すぐに使いこなせる? |
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部長クラス |
・投資した金額に対して、どれだけ効果が出る? ・自部門の目標達成にどう貢献する? |
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情報システム部門 |
・既存環境との整合性は問題ない? ・セキュリティポリシーに適合する? |
このように、顧客のゴールまでの道のりを手助けする視点で資料を作成しましょう。
次に、「この資料で顧客にどこまで理解してもらいたいのか」をはっきりさせます。目的が曖昧な資料は、情報を載せても要点が伝わらず、商談の流れを前に進められません。
良い営業資料とは、担当者が説明していない場面でも、顧客が次に判断すべき内容を把握できるものです。たとえば、商談の序盤では「何が課題なのか」を整理する資料が役立ち、終盤では「社内でどのように稟議を通すか」を判断しやすい資料が求められます。
目的が明確であれば、資料に含めるべき情報やメッセージの強弱が自ずと決まります。
資料は「どの場面で使うか」によって作り方が変わります。商談で説明しながら使うものと、後から顧客が自分で読むものでは、求められる情報の密度や見せ方がまったく違います。
商談中に使う資料は、会話を進めやすくすることが目的です。細かい説明を詰め込むのではなく、要点が一目でつかめる構成にし、グラフや図で流れを示します。
一方、メールで送る資料や、社内稟議で回される資料は、読み手が一人で判断できることが前提です。背景や理由、判断材料となる情報を文章で補い、読み返しても迷わないつくりにします。
この違いを曖昧にしたまま資料を作ると、「説明用なのに文字が多い」「読む用なのに前提が書かれていない」といったズレが生まれ、商談の進みが悪くなります。使う場面を決めたうえで構成を考えることが、資料の機能性を大きく左右します。
ここでは、顧客の意思決定を後押しする営業資料の基本的な構成要素を、伝える順番に沿って解説します。
表紙は、資料全体の第一印象を決める部分です。人は最初の3秒で第一印象を決めると言われています。そのため、相手の心を掴むために読み手が一目見て「自分に関係がある」と感じるタイトルをつけることが重要です。
たとえば、以下のように「誰に何を提供できるのか」を明確に示します。
あわせて、提案先の会社名や日付、自社のロゴなども忘れずに記載しましょう。
次に顧客が抱える課題を提示し、提案全体を「自分ごと化」させます。いきなり自社の言いたい内容を話すのではなく、まず相手の関心を引きつけ、共感を得ます。
たとえば、「営業担当者の時間の60%は、顧客対応以外の業務に費やされているとご存じですか?」といった客観的なデータを示すところから始めましょう。
問題の真因や放置した場合のリスクを言語化すると、課題解決の必要性をより強く感じてもらえます。
課題認識を共有できたら、次はその課題に対する解決の方向性を示し、未来への期待感を高めます。いきなり製品やサービスの詳細を説明するのではなく、まずはコンセプトや考え方を提示しましょう。
たとえば、「属人化しがちな営業プロセスは、仕組みによって解決が可能です」といったように、課題を解決するための方針を示します。この段階を挟むと、顧客は提案の全体像をスムーズに理解できます。
解決策の全体像を示した後、課題をどう解決できるかを自社の製品やサービスを通して具体的に紹介します。
たとえば、以下の内容を簡潔に記載します。
専門用語を多用せず、「先ほど提示した課題をこのように解決できます」という文脈で説明しましょう。
ここでは、顧客にとっての具体的な価値(ベネフィット)を伝え、選ばれる理由を明確にします。顧客は機能そのものではなく、機能によって得られる良い未来にお金を払います。
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悪い例(機能のみ) |
良い例(機能+価値) |
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Aという自動化機能があります。 |
A機能で作業時間が3時間から30分に短縮され、顧客との対話に集中できます。 |
このように、機能がもたらす具体的な価値を伝えましょう。
製品の価値を伝えたら、次は既存顧客の成功事例を紹介し、信頼と成功イメージを共有します。自社と業種や規模が似ている企業の成功事例を見ると、顧客は「自社でもうまくいくかもしれない」と導入後の姿を具体的にイメージできるでしょう。
たとえば、弊社の支援事例であるのSansan株式会社様の事例では、以下の構成でBefore/Afterがわかるストーリーとして紹介しています。
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構成要素 |
具体的な内容 |
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導入前の課題 |
イベント事業の拡大にあたり、新規領域の顧客を短期間で獲得する必要があった。 |
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具体的な施策 |
セールスのプロ集団である弊社が、迅速なフィードバックによる高速PDCAを構築した。 |
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導入後の成果 |
3ヶ月で116件の受注(受注率45%超え)を実現した。 |
参照:セールスプロフェッショナル集団による圧倒的なバランス感覚で、高速PDCAを回し3ヶ月116件受注(受注率45%超え)を実現
顧客は他社と比較検討するため、資料の中で先回りして優位性を客観的に示す必要があります。以下のように比較表を使い、自社の強みを明確に伝えましょう。
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自社 |
A社 |
B社 |
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機能 |
◎ |
〇 |
△ |
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価格 |
〇 |
〇 |
◎ |
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サポート体制 |
◎ |
△ |
〇 |
他社をおとしめるのではなく、あくまで客観的な事実に基づいて伝える姿勢が大切です。
料金プランのパートでは、価格を明確に提示すると同時に、費用対効果をわかりやすくすることが求められます。価格が不明瞭だったり複雑すぎたりすると、顧客は不信感を抱きかねません。
プランごとに利用できる機能や費用を、以下のように一覧で示しましょう。
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プラン名 |
Basic |
Standard |
Pro |
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月額費用 |
10,000円 |
30,000円 |
50,000円 |
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機能A |
〇 |
〇 |
〇 |
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機能B |
- |
〇 |
〇 |
さらに費用対効果(ROI)の試算を示すと、価格に対する納得感が高まります。なお、Grand Centralは費用対効果を測るために、ROIのほかにも複数の指標の活用を推奨しています。
具体的には、CPA(新規商談1件の獲得にかかった費用)やCAC(新規受注1件あたりのコスト)といった指標です。詳しくはROIの具体的な計算方法や効果測定の指標、さらに費用対効果を高める方法について解説した、以下の記事もあわせてご覧ください。
新しいサービスの導入に対する顧客の心理的なハードルを下げ、不安を解消し次の行動を後押しするために、具体的な導入の流れを示します。
たとえば、以下のステップで日数の目安と共に図解すると、導入プロセスがシンプルであると伝わります。
FAQのパートでは、顧客が抱えそうな疑問を先回りして解決しましょう。たとえば、以下のような質問に答えておくと、顧客の不安を解消できます。
FAQは、担当者が社内で稟議を通す際の後押し資料にもなります。
資料の最後には、会社概要や実績を示して安心と信頼を証明し、次の行動を促すための情報を記載します。以下の内容をまとめた会社概要を載せ、安心して取引できる企業であることを示しましょう。
そして、電話番号やメールアドレスなどの連絡先をわかりやすく示し、次にしてほしい行動(CTA)を明確に伝えます。
ここでは、営業資料の質をさらに高めるための5つのポイントを解説します。
伝わる資料を作るには、「1スライド1メッセージ」の原則を徹底します。これは、1枚のスライドで伝えたい内容をひとつに絞る考え方です。
たとえば、以下のようなスライド構成が理想的です。
【スライド例】
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営業担当者の時間は、コア業務以外に奪われている ある調査によると、営業担当者の時間の内訳は以下のとおりです。
→ 営業時間の半分以上が、直接的な営業活動以外に費やされています。 |
複数の情報を詰め込むと主旨がぼやけ、結局何を持ち帰ってほしいのかが伝わりません。情報量を必要最小限に整え、読み手が理解しやすい形にすることが重要です。
営業資料は、その分野の専門家だけが読むとは限らず、専門知識をもっていない方が読む可能性があります。そのため、資料に書く言葉は誰が読んでも理解できるよう、平易な言葉を選びましょう。
たとえば、以下のように専門用語をわかりやすい言葉に置き換えます。
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専門用語・カタカナ語 |
わかりやすい表現 |
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コンバージョンレート |
成約率 |
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KPI |
目標達成のための指標 |
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エビデンス |
根拠、証拠 |
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スキーム |
枠組み、計画 |
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リソース |
資源、人員 |
文字が中心の資料は、読む負荷が大きく、要点も記憶に残りにくくなります。そこで、内容の構造を一目で理解できるよう、スライドは 視覚情報を主体に組み立てます。たとえば、対象に応じて以下のように表現を切り替えます。
ただし、意味のない装飾は理解の妨げになるため、シンプルでわかりやすいデザインを心がけましょう。
提案の説得力を高めるには、客観的なデータや具体的な数値の活用が有効です。「効果があります」といった抽象的な表現よりも、「この方法でコストを30%削減できます」と具体的な数値で示した方が、説得力があります。
主張や説明の根拠として、以下のデータを積極的に活用しましょう。
客観的なデータは、提案全体の信頼性を向上させます。
ゼロから資料を作るのではなく、テンプレートや最新のAIツールを活用し、時間短縮を図りましょう。たとえば、以下のようなツールがあります。
ここでは、Grand Centralが提供するサービスと、これまでの支援実績を紹介します。
Grand Centralが提供するセールスデベロップメントとは、営業コンサルティングと営業代行をハイブリッドした支援のことです。コンサルティングで仮説を立て、営業代行で検証することで、属人化しない、再現性のある営業の仕組みを構築します。
個人の経験や勘に頼る営業活動では、組織として安定した成果を出し続けるのは困難です。私たちは、営業プロセス全体をデータにもとづいて最適化し、お客様の営業部門が継続的に成果を上げられる体制づくりをお手伝いします。
私たちのサービスには、他社にはない3つの特徴があります。
キーエンスやSalesforceなどの優れた営業管理モデルを参考に、データにもとづく再現性の高い営業プロセスを設計します。
創業以来、顧客満足度97%を維持しています。一過性の成果で終わらない長期的な伴走力で、お客様の事業成長に貢献し続けます。
勝ちパターンが構築されたスクリプトや応酬トーク集など、各営業フェーズに最適化された高品質なコンテンツを提供します。
日揮グローバル株式会社様は、企画中のイベント事業をより多くの企業へ届けるため、営業体制の強化が急務となっていました。既存顧客ではなく、新しい領域へ短期間でアプローチする必要があったことから、外部パートナーの活用をご検討されていました。
そのなかでGrand Centralへご依頼いただき、営業戦略の設計から日々の商談創出、イベント来場に向けたプロモーションまで、伴走型で支援を実施しました。Slack上での迅速な連携や、進捗に応じた施策のチューニングにより、高速でPDCAを回しながら効果検証を進めることができました。
結果として、一定量の商談創出だけでなく、イベントの成否に直結する来場促進にも寄与し、短期間で成果につながる営業体制の構築をご支援しました。
Grand Centralでは、新規領域へのアプローチや仮説検証が必要なプロジェクトに対し、戦略設計から実行支援まで一貫して対応しています。営業体制を強化したい企業様は、ぜひご相談ください。
成果を生む営業資料で重要なのは、単に情報をまとめるだけでなく、顧客を主人公にしたストーリーと科学的な根拠にもとづいて設計することです。この記事で紹介した構成やポイントを参考に、貴社だけの勝ちパターンとなる営業資料を作成しましょう。
以下の資料では、この記事で解説した営業資料の作成に加えて、営業プロセス全体の仕組み化まで、貴社の営業課題を解決する方法を具体的にまとめています。パートナー選定の際に、比較検討の材料としてご活用ください。