「営業成績が伸び悩んでいる」「商談後の振り返りの具体的な方法がわからない」といった課題に悩んでいませんか。
本記事では、データとフレームワークに基づいた振り返りの方法について具体的に解説します。この記事で紹介する手順に沿って進めることで、商談のどの部分で成果を止めているのかを特定でき、次の商談で直すべきポイントがはっきり見えるようになるでしょう。
営業に振り返りが欠かせない理由は、成果の伸び悩みの多くが「やり方ではなく、判断の誤り」から生まれるためです。
市場が成熟し、顧客が自分で情報を集められる今の環境では、「どの商談で何が噛み合わなかったのか」「プロセスのどこにボトルネックがあるのか」を定期的に見直さない限り、行動量を増やしても成果が変わりにくくなります。
特に日本の営業現場では、結果だけを追いかける文化が根強く、「何を基準に振り返ればいいのか」が曖昧なまま進んでしまうケースが多いです。
だからこそ商談の流れを分解し、判断のズレを明確にする振り返りが重要になります。これができる営業ほど、改善ポイントを早い段階で見つけ、成果につながる行動へ切り替えられます。
ここでは、営業の振り返りを具体的な3つのステップに分けて解説します。
なお、この振り返りのプロセス、特に「次の行動に落とし込む」ステップでは、具体的な会話の台本である営業スクリプトの見直しが有効です。成果の出る営業スクリプトの作り方については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
振り返りの最初に行うのは、感覚ではなく「事実」を揃えることです。記憶だけで判断すると、改善すべきポイントが見えづらくなるため、商談の内容とプロセスを客観的に確認します。
SFAやCRM、商談の録音データから、商談化率・フェーズ移行率などプロセスの数字にも目を通します。その際、以下の観点で事実を整理していくと良いでしょう。
この段階で「起きていたこと」と「自分が行ったこと」を切り分けておくと、次のステップで行う原因の特定や改善策の精度が大きく上がります。
現状を客観的に把握したら、事実が「なぜ」起きたのか、根本的な原因を深掘りしましょう。振り返りの質を左右するのは、表面的なスキル不足に着地させず、商談が進まなかった理由の構造まで深堀できるかどうかです。
たとえば、「受注率が低い」という事象に対して、「商品説明のスキル不足」と結論づけるだけでは、根本的な解決に至らない場合があります。「もしかしたら、顧客は機能そのものより、導入後のサポート体制に不安をいだいているのでは?」というように、視点を変えて物事を捉えると、本質的な原因が見えてきます。
「うまくいかなかった点はどこか」「提案した価値は、顧客に正しく伝わったか」といった問いを重ね、多角的に分析しましょう。
原因が見えた後は、「個人の行動」と「チームの仕組み」という二つの視点で、次のアクションを具体化します。
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個人の行動 |
チームの仕組み |
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・次回までにロープレを1回行う ・ヒアリングで確認する質問を3つだけ固定する ・顧客の判断軸を初回で聞く“タイミング”を変える |
・導入後サポートの説明不足が共通課題なら、サポート内容をまとめた資料を標準装備にする ・決裁プロセスの聞き漏れが多いなら、初回商談用のチェックリストを作る |
個人の行動では、短期間で着手できる具体的な行動に落とし込むことで改善が進みやすくなります。一方でチームの仕組みでは、「何を直すのか」「その改善によってどんな状態をつくりたいのか」を明確にしておくと、全体の改善スピードが高まります。
ここでは、営業商談の振り返りに使える代表的なフレームワークを2つ解説します。
それぞれのフレームワークには特徴があり、目的や状況に応じて使い分けるのが有効です。
KPT(ケーピーティー)は、具体的な問題解決に特化した、シンプルでわかりやすいフレームワークです。以下の3つの観点で、短時間でスピーディーに振り返ります。
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3つの観点 |
具体例 |
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Keep(良かった点・続ける内容) |
導入事例の紹介が、顧客にとてもひびいた |
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Problem(問題点・改善が必要な内容) |
料金説明の際に、顧客の表情が雲ってしまった |
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Try(次に試す内容) |
次回から、松竹梅の3プランを提示し、顧客に選んでもらう形にする |
このように、KPTは業務の流れにおける課題を見つけ出し、改善する場面で有効です。
ただし、KPTが本来の力を発揮するのは、安心して話せる場があるときです。「Problem」を取り上げる場が、失敗を責める空気になってしまうと、誰も本音を出せません。本音が出なければ、課題は見つからず、KPTは形式だけが残ります。
大切なのは、失敗を追及するのではなく、「次にどう進むか」をチームで一緒に考えるための材料として扱う姿勢です。リーダーがこのスタンスを示すだけで、メンバーは「話しても大丈夫だ」と感じられるようになり、実際に改善につながるKPTが回り始めます。
YWT(やったこと・わかったこと・次にやること)は、日本能率協会コンサルティングが提唱した、経験から学びを引き出すためのフレームワークです。以下の3つの観点で振り返りを行います。
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3つの観点 |
具体例 |
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Yatta(やったこと) |
部長クラスの方にDXの重要性を説明した |
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Wakatta(気づいたこと) |
部長は納得したが、現場のメンバーは変化を望んでいないようだった |
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Tsugi(次にやること) |
次回は現場のリーダーに個別にアプローチし、味方になってもらう |
KPTとの違いは、「Problem(問題点)」を扱わない点です。うまくいかなかった場面でも、何が分かったのか・どんな学びがあったのかに焦点が当たるため、メンバーが萎縮しにくく、次の行動に踏み出しやすくなります。
また、失敗したように見える経験でも、「このやり方では動かない人がいる、という事実が分かった」という形で前向きに整理できるのがYWTの特徴です。
新人や若手のように、自信の揺らぎが成果に直結しやすいメンバーには特に効果的で、行動量や挑戦の継続を後押ししやすくなります。
振り返りの質をもう一段階高めるために、知っておきたい2つの学習理論があります。具体的には以下の2つです。
シングルループラーニングとは、既存の目標やルールを前提として、その枠内で行動を修正・改善していく学び方のことです。日々の業務改善活動の多くは、このシングルループラーニングにあたります。たとえば、次のような思考です。
このように、設定されたゴールに向けて効率よく軌道修正する局面では有効です。しかし、行動レベルの修正に留まるため、根本的な問題解決には至りません。そこで必要になるのが、次に解説するダブルループラーニングです。
ダブルループラーニングは、より根本的な問題解決に有効な学び方です。シングルループラーニングが「行動」を修正するのに対し、ダブルループラーニングは、その行動の前提となっている目標や戦略、価値観「そのもの」を問い直します。
同じ「売上目標が未達」という結果に対しても、ダブルループラーニングでは以下のように、そもそもの前提に立ち返って考えます。
また、シングルループラーニングとダブルループラーニングでは、以下のように思考プロセスに違いがあります。
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比較項目 |
シングルループラーニング |
ダブルループラーニング |
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問いかける視点 |
どうすれば、もっとうまくやれるか? |
そもそも、やるべきことは正しいか? |
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具体的な思考 |
架電数が足りなかったので、来月は1.5倍に増やそう |
アポ件数だけを目標にするのが問題ではないか? ターゲット層は本当に正しいか? |
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修正の対象 |
行動・戦術 |
前提・戦略・目標 |
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主な目的 |
既存の枠内での改善・効率化 |
根本的な問題解決・変革 |
ダブルループラーニングは、主にマネージャーやリーダーがチームの戦略そのものを見直す際に有効な考え方です。現場の担当者は、まずシングルループ学習で日々の行動を着実に見直していくことが重要です。
ここでは、成果を出し続ける営業担当者が共通して持つ、2つの思考法を解説します。
この思考法を取り入れると、個人の成長だけでなく、チーム全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。
結果を出す営業担当者は、振り返りの際、課題を個人の問題ではなく仕組みの問題としてとらえます。たとえば、以下のように部下へのフィードバックに違いがあります。
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悪い例(人を責める) |
良い例(仕組みを問う) |
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「君はやる気が足りないから失注したんだ。」 |
「データを見ると、この部分の移行率が低い。このプロセスのどこにボトルネックがあるか、一緒に考えよう。」 |
議論の対象を「人」から「事(事実・データ)」に移すことが大切です。こうした姿勢が定着すると、メンバーが安心して挑戦できる環境が整い、組織としての強さにもつながります。
チーム内で学びを共有し、再現性を高める姿勢も重要です。振り返りは個人の反省で完結させず、組織としての手順や判断基準を更新するために行います。
たとえば、ある営業担当者が見つけた効果的なトークや資料を、振り返りの場でチーム全体に共有し、組織の標準的な手順を更新していきます。一人の小さな成功体験が、チーム全員が使える「再現性のあるノウハウ」へと変わります。この考え方が、セールスイネーブルメントの基本です。
チーム全体のレベルを向上させる具体的な育成方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
営業とひとことで言っても、職種によって適切な振り返りの頻度やポイントは異なります。
職種に合った振り返りのリズムとポイントをつかみ、日々の業務に活かしましょう。
インサイドセールスは、行動量が成果に直結しやすい職種であるため、日次で短い改善サイクルを高速で回すのが有効です。一日の業務終了時に、以下の観点で定量・定性の両面から振り返ります。
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振り返りの観点 |
具体的な確認項目 |
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KPI(定量) |
・架電数 ・接続率 ・アポイント獲得率 |
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トーク内容(定性) |
・アポが取れた会話と取れなかった会話の違いは何か ・どのトークが相手にひびいたか ・切り返しがうまくいかなかった点はどこか |
その日のうちに成功パターンを特定し、翌日の会話の台本に反映させます。この小さな改善の積み重ねが、大きな成果につながります。
フィールドセールスは、1件ごとの商談サイクルが比較的長いのが特徴です。そのため、1週間単位で複数の商談をまとめて振り返り、共通の傾向を見つけ出すのが有効です。週の終わりには、個別の商談の勝ち負けだけでなく、以下のような視点で課題を抽出します。
たとえば、「今週失注した案件は、すべて決裁者へのアプローチが遅れていた」という共通点が見つかったとします。その場合、「来週は初回訪問で決裁者同席を依頼するトークを試そう」という、具体的な次の一手を決められます。
カスタマーサクセスは、長期的な顧客との関係性が成果を左右します。そのため、月単位で顧客の利用状況を分析し、中長期的な視点で改善策を考えるのが有効です。
月末の振り返りでは、解約率やLTV(顧客生涯価値)といった最終的な結果に加え、以下のような先行指標を確認します。
たとえば、「利用率が低下している顧客群をリストアップ・分析し、次の1ヵ月で実施するフォローアップ施策を計画する」といったアクションにつなげます。これにより、解約の予兆を早期に察知し、先回りした対策を打てます。
成果につながる振り返りを自社だけで仕組み化するのは、簡単ではありません。ここでは、私たちGrand Centralが提供するサービスを紹介します。
Grand Centralが提供する「セールスイネーブメント」とは、営業組織が継続的に成果を出し続けるための「仕組みづくり」を支援するサービスです。
単に営業活動を代行するのではありません。貴社の現状をヒアリングした上で、営業力強化に向けた戦略を立て、研修カリキュラムの作成から実行、そして結果の分析・評価までを一貫して伴走します。
最終的には、貴社自身がデータに基づいた科学的な振り返りを実践し、「勝てる仕組み」を自走できる形で定着させるのが私たちのゴールです。
Grand Centralは「成果を出し続ける」ことに強くこだわっています。その根拠となるのが、次の3つの特徴です。
キーエンスやSalesforceなどでトップレベルの営業を経験したコンサルタントが、貴社の現状を分析します。そして、成果の出る営業の行動を「標準プロセス」として、誰でも実践できる「型」に落とし込みます。
SFA/CRMのデータを活用し、営業プロセスのどこにボトルネックがあるのかを客観的に特定します。個人の感覚ではなく、事実に基づいた改善策を立案し、実行します。
仕組みを作るだけでなく、研修やOJTを通じて現場に定着するまでを徹底的に支援します。AIによる商談解析なども活用し、新人の育成期間を短縮した実績もあります。
株式会社オロ様は、クラウド型業務システムのマーケティング活動において、目標商談数の未達成が続くという課題をかかえていました。以前に他社へ依頼した際は、リード情報を獲得することにとどまり、商談数の増加につながらなかった経験がありました。
そこでGrand Centralは成果から逆算した明確なKPI設計と、質の高い商談を創出するための具体的なアイデアを提案。結果として商談数の増加だけでなく、アポイントの質向上においても大きな成果を残し、「他社様へ依頼していたときよりも数字が圧倒的に上がっている」と高い評価をいただいています。
日々の振り返りを仕組みとして運用できるようになると、チームの判断や動きは安定し、成果につながりやすくなります。本記事で紹介した考え方を参考に、自社の状況に合わせて少しずつ取り入れてみてください。
もし、「自社だけで仕組みを構築するのが難しい」「より早く確実に成果を出したい」といった場合は、私たちプロの力に頼るのも有効な選択肢のひとつです。ぜひお気軽にご相談ください。