「エンプラ営業とは何だろうか」「どう行えばよいか知りたい」と悩む方もいるのではないでしょうか。
パレートの法則(2:8の法則)で示されるように、ビジネスでは売り上げの大半を一部の優良顧客が創出する場合もあり、エンタープライズ営業の成功は組織にとって大きな影響をもたらします。
エンタープライズ営業を行うには、通常の営業とは異なる戦略的な攻略ステップが必要です。
本記事では、エンプラ営業に必要なスキルや、複雑な決裁ルートを突破し大型契約を獲得するための実践ノウハウなどを解説します。
エンプラ営業とは、エンタープライズ営業の略称で、大企業や官公庁などの大規模組織を対象にした営業手法です。大きな組織を相手にする営業であり、目の前の担当者を説得するだけでは受注できません。
対個人や中小企業相手の営業では、責任者の一存で即決できる場合もありますが、エンプラ営業では複数の部門や役職者の合意が必要です。
検討期間も長く、半年以上かかることもあり、契約の動機も「経営課題の解決」や「中期経営計画への寄与」など大きなものが求められます。
エンプラ営業におけるセールスパーソンの役割は、プロダクトを売ることではなく、相手の担当者と一緒に社内を説得することだといってもよいでしょう。
エンタープライズ営業が重要なのは、得られる収益のインパクトが非常に大きいためです。
大企業1社との取引が成功するだけで、自社の年間売上目標を達成できる可能性もあります。
また、市場における影響力も見逃せません。業界最大手の企業が自社のサービスを導入したという事実は、強力な導入実績となります。この実績は他社への営業活動において信頼性の証となり、ブランド力を向上させ、次なる顧客を獲得しやすくするという好循環を生み出すのです。
さらに、大手企業は不況時でも経営体力が比較的あるため、長期的な視点で安定した取引が期待できるでしょう。
エンタープライズ営業の方法がわからない方でも、Grand Centralでは営業戦略の策定やノウハウの提供、営業の代行まで包括的に支援しています。
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エンタープライズ営業と、中小企業や個人向けの営業との違いは、主に意思決定のプロセスや受注までの期間にあります。
まず意思決定のプロセスですが、中小企業や個人では社長や担当者の一存で即決されることもあります。一方、大企業では担当者や部長、役員、場合によっては経営会議といった具合に、承認を得るべき階層が多岐にわたります。
エンタープライズ営業ではこの複雑な承認ルートを通過し、各階層のキーパーソンを納得させる必要があります。
次に、受注までの期間の違いです。中小企業や個人向け営業では初回訪問から数週間〜1ヶ月程度で受注できることもありますが、エンプラ営業では半年から1年、長ければ数年単位の時間がかかることも珍しくありません。
エンタープライズ営業を成功させるためには、緻密な営業戦略を計画し、時間をかけて取り組む必要があるでしょう。
営業には、既存顧客に働きかける「深耕営業」という方法もあります。深耕営業について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
エンタープライズ営業を成功させるためには、一般的な営業スキルに加えてより高度な能力が求められます。
エンタープライズ営業に必要なスキルとは、以下の3つです。
エンタープライズ営業を成功させるためには、徹底した情報収集力が必要です。
大企業は組織の規模が大きいため、責任者以外は知らない情報も多くあります。そのため、相手企業の課題やニーズを聞いても、担当者にすべて答えてもらえるとは限りません。
相手企業の表面的な情報だけでなく、最近のニュースリリースや業界の動向などを参考に、企業の課題や今後の方向性を先回りして提示することが接点を作るきっかけになります。
さらに、組織内部の情報収集も欠かせません。誰が実質的な決定権を持っているのか、誰が予算を管理しているのかといった組織の実態を把握する力も求められます。
集めた情報をもとに、どのようにして契約までたどり着くかを考える戦略的思考力も重要です。
エンタープライズ営業は、長期間にわたる活動を見据えた営業手法です。そのため、ゴールから逆算して、どの関係者にどうアプローチするかなどを設計する必要があります。戦略なしで動くと場当たり的な営業になり、時間の浪費になりかねません。
たとえば、「まずは現場の担当者にメリットを訴求して味方につけ、一緒に決裁者向けの資料を作成し提案を通す」といったように、フェーズごとの攻略シナリオを立てる必要があるでしょう。
短期的な売り上げを追うのではなく、中長期的な視点でゴールから逆算してアクションプランを策定できるかどうかが、エンタープライズ営業のポイントです。
大企業との取引では、契約条件などの調整がシビアなため、一定の交渉力も求められます。
単なる価格交渉だけでなく、納期や支払い条件、セキュリティの基準など、法務などが関わる複雑な条件交渉も発生するでしょう。
ここでいう交渉力とは、相手の要求をすべて飲むことではありません。自社の利益を守りつつ、相手にとってもメリットのある落とし所を見つける調整能力のことです。
大企業の購買部門はプロのバイヤーであり、コスト削減やリスク回避のために厳しい要求を突きつけてくることが考えられます。
このような要求に対して、自社内の法務部や開発部とも連携し、調整を行いながら顧客と向き合う高度な交渉力が必要です。
難易度が高いとされるエンタープライズ営業ですが、その分、成功した際に得られるリターンも大きいものとなります。
エンタープライズ営業の主なメリットは、以下の4つです。
エンタープライズ営業の大きなメリットは、契約単価の大きさです。
大企業は予算規模が中小企業と比べて多く、一度の受注で数千万円、場合によっては数億円の売り上げが立つこともあります。
100万円の商材を100社に売って1億円を作るのと、1億円のプロジェクトを1社から受注するのとでは、営業の効率も大きく異なります。多くの顧客を管理するコストを抑えつつ、大きな売り上げを確保できるため、利益率の向上にもつながるでしょう。
また、大きな売り上げが立つことで、自社の研究開発や人材採用に投資できる資金が増え、企業の成長を加速させる原動力となります。
長期的な関係を築きやすいことも、エンタープライズ営業の長所です。
大企業は、一度導入したシステムやサービスを簡単には変更しません。なぜなら、組織が巨大であり、新しいツールの導入や切り替えには膨大なコストと教育の手間がかかるためです。
そのため、一度信頼を得て契約に至れば、よほどの方針変更やトラブルがない限り、長期にわたって契約が継続される傾向にあります。サブスクリプション型(定額制)のビジネスモデルであれば、解約率を低く抑えられて、安定した収益を見込めるでしょう。
この安定性は、経営計画を立てるうえで重要な要素となり、企業の財務基盤を強固なものにします。継続的な関係を築くことで、取引先にとって単なる業者ではなく、ともにビジネスを創るパートナーとしての地位を確立できるのです。
エンタープライズ営業では、信頼関係を築けば同じ顧客から複数の案件を獲得できる可能性があります。
大企業は、多くの事業部や支社、関連子会社を持っています。ひとつの部署で実績を作り、高い評価を得られれば、プロダクトの横展開が可能になるのです。
たとえば、あるメーカーの人事部で採用管理システムを導入して成功した場合、その評判を聞いた別の事業部やグループ会社から「うちでも使いたい」と声がかかる可能性が考えられるでしょう。
既存顧客内での営業活動は、新規開拓に比べて信頼関係ができている分、受注のハードルが格段に下がります。一社の中に複数の企業が存在するかのような構造であるため、一度入り込むことができれば、そこから連鎖的に案件を拡大していけるのが、エンタープライズ営業の大きなメリットです。
大手企業との取引実績は、社会的な評価と信用力にもつながります。
BtoBビジネスにおいては、企業の導入実績が見込み顧客の信頼獲得に大きく影響するためです。大手企業はコンプライアンスやセキュリティ基準が厳しいため、その点をクリアしているという事実だけで、一定のお墨付きを得たことになります。
この社会的評価により、他社への営業活動がスムーズになるだけでなく、メディアからの取材が増えたり、優秀な人材が集まりやすくなったりと、採用や広報の面でも大きな副次効果をもたらしてくれます。
エンタープライズ営業には以下のようなデメリットも存在します。
これらのデメリットを踏まえたうえで、エンタープライズ営業に取り組むかどうかを検討しましょう。
エンタープライズ営業では、アプローチできる顧客の母数が少ないというデメリットがあります。
日本国内において、大企業と定義される会社は全体のわずか0.3%程度といわれています。絶対数が非常に少ないため、アプローチできる企業は少数に限られてしまうでしょう。
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2021年(6月1日時点) |
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中小企業 |
336.5万社(99.7%) |
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中小企業のうち小規模事業者 |
285.3万社(84.5%) |
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大企業 |
1万364社(0.3%) |
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合計(中小企業と大企業の合計) |
337.5万社 |
参考:中小企業庁|中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果を公表します
中小企業向けの営業であれば、失注しても気持ちを切り替えて別の企業にアプローチできます。ですが、エンタープライズ営業ではターゲット企業が業界内に数社しかないというケースも考えられるでしょう。
そのため、一社の重みが非常に大きく、限られた枠を巡って競合他社と争うことになるため、レベルの高い競争環境に身を置くことになります。
大企業への営業は受注までの期間が非常に長くなります。アプローチを開始してから実際に契約書を交わし、入金されるまでに1年以上かかることも珍しくありません。
受注まで時間がかかるということは、短期での売り上げが出ず、上司から案件は進んでいるのかと問い詰められるなどのプレッシャーがあることを意味します。
また、もし長期間かけて追いかけた大型案件が最終段階で失注してしまった場合、その間の営業コストはすべてムダになってしまいます。売り上げが立つのが後になるため、資本的体力のないスタートアップ企業などが安易にエンタープライズ営業に特化すると、資金繰りが厳しくなるリスクも考えられるでしょう。
エンタープライズ営業には、長期戦に耐える経済的体力と、精神的な忍耐力が求められるのです。
複数の部門や役職者の承認を得る、複雑な決裁ルートを突破しなければならないというハードルも存在します。
大企業の意思決定プロセスは非常に複雑です。現場の担当者が導入したいと希望していても、その上司、さらに予算を握る役員やセキュリティチェックなどを通過しなければなりません。
現場は使いやすさを求めるが、経営層は費用対効果を求めるなど、それぞれの立場で重視するポイントは異なります。これらすべての利害関係者の懸念を払拭し、合意を得る必要があり、かなりハードルが高いのが一般的です。
エンタープライズ営業では多くの関係者の事情を考慮し、各方面が納得できるように進める必要があります。
エンタープライズ営業を計画的に進める4つのステップを紹介します。
効率的な計画を立て、焦らず着実に進めていきましょう。
最初のステップは、攻めるべきターゲット企業の選定です。
エンプラ営業ではひとつの案件に1年以上などの長い期間がかかるため、見込みのない企業にリソースを使うと大きな損をする可能性があります。単に売り上げが大きいという基準だけで選ぶのではなく、自社の製品・サービスと親和性が高く、導入の余地がある企業を厳選しましょう。
企業選定では、「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)」の考え方が参考になります。
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ABM:「Account Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)」の略。特定の企業や団体をターゲットとして設定し、より多くの売り上げが得られるよう、戦略的にアプローチするマーケティングおよび営業手法のこと。 |
企業の業種や規模だけでなく、「中期経営計画でコスト削減を掲げている」「競合製品の契約更新時期が近い」といった情報も加味して優先順位をつけましょう。
使えるリソースは限りがあるため、見込みの高い企業や戦略的にどうしてもアプローチしたい企業に絞り込み、戦略プランを立てることが重要です。
ターゲットが決まったらいきなり売り込むのではなく、接点を作り関係を構築するフェーズに入ります。
大企業はセキュリティが高く、代表電話にかけても担当者につないでもらえないことがほとんどです。そのため、支社担当者との交流、展示会での名刺交換、ウェビナーへの招待など多角的なアプローチで接点を探る必要があるでしょう。
一度接点がもてたらすぐに商談にするのではなく、相手にとって有益な情報を提供し続け、信頼関係を構築します。
「この営業担当者は我々の業界をよく知っている」「相談にのってくれるよいパートナーだ」と認識してもらうことが、次のステップへの鍵となります。
信頼関係ができ、相手の潜在ニーズや課題が明確になった段階で担当者に具体的な提案を行います。
提案に使う資料は汎用的なものではなく、その提案企業のためだけにカスタマイズされたものを用意するのが理想的です。相手企業の課題に対して、実際のデータや数字を用いて具体的なメリットや導入手順を提示しましょう。
また、この段階で、担当者が社内で稟議を通しやすいようにサポートすることも重要です。エンタープライズ営業は組織攻略が必要なため、特定の担当者にどれほどよい提案をしても、社内で推進してくれる人がいなければ稟議は通りません。
決裁者が気にするポイントを先回りして資料に盛り込んだり、想定される問答集を作成して担当者に渡したりと、相手企業の担当者と協力して社内決裁を取りにいく必要があります。
無事に成約しプロダクトを導入できたら確実に顧客の成果を出し、その実績を武器に他部門や関連会社へ横展開しましょう。1社から複数の案件を獲得できるのがエンタープライズ営業の強みです。
まずはスモールスタートでもよいので、導入支援を手厚く行い、現場で実際に効果が出ていることを証明しましょう。
実績ができれば、それをもとに「他の部署や関係会社でも同様の課題はありませんか?」といった横展開を仕掛けられます。また、定例会などを開催し、常に顧客の状況をアップデートし続けることで新たな課題を発見し、追加提案につなげてもよいでしょう。
契約後、営業担当者はカスタマーサクセスの役割も担い、顧客の成功を支援するという姿勢で継続的にフォローすることが、エンタープライズ営業で長期的に成功する秘訣です。
ここまで解説してきた通り、エンタープライズ営業は難易度が高い手法です。多数の関係者の利害調整や数年単位の活動、論理的かつ高度な提案力などが必要になります。
また、個人の営業力だけでなく、マーケティングやインサイドセールスといった組織全体の連携力も問われるでしょう。よい商材を作れば売れるという単純な世界ではなく、戦略や組織力を含めた総合的なビジネス力が試されるため、多くの企業が壁にぶつかり、挫折してしまうのです。
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