トップセールスの個人力に依存した営業体制に課題を感じ、「チームで成果を再現できる仕組みをつくりたい」と考える営業責任者もいるでしょう。
担当者ごとの成績にばらつきがあり、新人育成も進まない状況では、組織の成長が停滞します。誰が担当しても一定の成果を上げられるように仕組みを整えることが、継続的な営業力の向上につながります。
本記事では、営業における再現性の考え方や構築のステップ、成果につなげるための実践ポイントについて解説します。
営業における再現性とは、組織として標準化されたプロセスや共有されたノウハウ、データ活用の仕組みによって、「誰が担当しても一定の成果を安定的に生み出せる状態」を指します。
そのため、特定の個人の才能や経験に依存している組織状態は、決して再現性が高いとはいえません。多くの企業が、こうしたトップセールスの実績に頼る属人化した状況が課題といえるでしょう。
再現性のない組織は、担当者によって成果が大きく変動するため売上目標の達成が読みづらい傾向にあります。また中核メンバーが退職すると、組織の営業力が大幅に低下するリスクを常に抱えています。
安定した経営活動を実現するには、属人化を早期に解決し、新人や若手、営業が苦手な担当者でも結果が出せる再現性の強い体制を構築する必要があります。
強い営業組織を作るためには、いまの組織がどのような立ち位置にいるか見つめ直してみることが大切です。そこで本章では、再現性が高い組織と、再現性がない組織の特徴について解説します。
再現性の高い営業組織には、共通していくつかの特徴があります。データを基盤に営業プロセスを設計・管理しており、個人の経験やスキルに頼らなくてもチーム全体で成果を維持できる点がその代表例です。
たとえば、CRMやSFAを活用して商談フェーズごとのデータを分析し、成果につながる行動を営業プロセスに反映しています。これにより売上の見通しが立ちやすく、長期的な戦略設計も容易になります。
また、社内でナレッジを共有する仕組みが整っており、「なぜ受注できたのか」「どのような要因で失注したのか」を全員で検証しています。こうした情報がマニュアルやロールプレイの内容に反映され、新人や若手も同じ基準で成果を出せる体制が確立されています。
成果が担当者によって大きく変動する組織では、営業プロセスが属人化し、仕組みとして再現できていないことが多く見られます。
トップセールスの経験やノウハウが共有されず、営業手法が個人任せになっている点が典型です。営業フローも標準化されておらず、メンバーによって提案の流れや商談の進め方がばらつきます。
また、CRMや営業管理ツールの運用ルールが統一されていない場合、データの精度が低く、成果の分析や改善につなげられないでしょう。マネジメントも感覚的になりやすく、施策の検証が形骸化しがちです。
このような環境では、チーム全体で成果を積み上げる仕組みが育たず、組織として継続的に成果を出し続けることが難しくなります。
下記の資料では、営業に強い組織を作り上げた成功事例と、課題を解決するための方法を紹介しています。安定した成果を創出できる組織作りとして、ぜひご活用ください。
ここでは、再現性の高い営業組織を作るメリットを3つ解説します。
再現性を高める目的は、担当者の力量や偶然に頼らず、安定して成果を出せる仕組みをつくることにあります。
トップセールスの提案手法やトーク設計を可視化し、チーム全体で共有できるようになると、誰が担当しても一定水準の成果を出せるようになります。新人や若手も成功パターンを再現できるため、チーム全体の底上げが進みます。
結果として、売上や受注率が担当者の好不調に左右されにくくなり、数字の波が小さくなります。マネージャーは日々の数字対応に追われる時間が減り、育成や新市場の開拓といった、次の一手に集中できる環境を整えられます。
再現性の高い営業組織は、担当者の退職や異動があっても業績へのダメージが最小限で済みます。
ノウハウや営業プロセスが個人に属している組織では、人材が入れ替わるたびに教育負担が発生し、戦力化までに長い時間とコストがかかります。属人化した状態では、採用投資を回収するまでに年単位の時間を要することも珍しくありません。
一方、再現性のある組織では、成果を上げた営業の手法が仕組みとして共有され、教育資料やトレーニングプログラムが整っています。新しいメンバーもその体系に沿って学べるため、早期に成果を出しやすく、育成コストも抑えられます。
さらに、こうした「早く活躍できる環境」が整っていること自体が、採用面でも大きな強みになります。未経験者や若手にとっても成長が見えやすく、優秀な人材が集まりやすい組織文化を築くことができます。
再現性のある営業体制を構築すると、マネージャーが個別の案件管理や属人的なフォローに追われる時間が減ります。その結果、限られた人員を新規顧客の開拓や既存顧客の深耕など、売上を拡大する活動に再配置できるようになります。
たとえば、責任者が日々の数値管理から解放され、戦略的な商談設計や新規市場のリサーチに時間を使えるようになれば、組織の成長スピードは着実に上がります。営業活動を仕組みで回せるようになることは、次の挑戦に踏み出すための現実的な余力を生み出します。
ここでは、「何から着手すれば良いか分からない」と悩むマネージャー・責任者の方に向けて、再現性の高い営業組織の構築に必要な手順を紹介します。
再現性を高める最初のステップは、トップセールスがどう勝っているのかをチーム全員で見える形にすることです。
まずは、顧客属性・商談フェーズ・失注理由といった基本データを整理し、成果につながる行動を洗い出します。たとえば「初回訪問で必ず決裁者と会う」「提案前に課題ヒアリングを2回行う」といった行動が成果に直結している場合、それをプロセスとして定義します。
次に、顧客の購買プロセスに沿って、各フェーズで営業担当者が何を・いつ・どのように行うかを整理します。これをチーム全員で共有できる形に落とし込むことで、属人化を防ぎ、改善の基準が揃います。
可視化した営業プロセスを機能させるには、売上などの最終目標から逆算して、日々の行動単位まで数値を細かく分解することが重要です。
たとえば「年間売上10億円」をKGIとした場合、そこから「四半期の受注社数×平均単価」「商談数×受注率」「アポイント数×商談化率」といった形で目標を連鎖させます。こうして作られた数値ツリーが、チーム全体の行動基準になります。
成果が上がらない時も、感覚ではなく数値で原因を追えるようになります。「受注率が低い」のではなく、「決裁者への提案率が目標より20%低い」など、行動レベルの課題を特定できれば、本人も納得して改善に取り組めます。
目標を細分化して可視化することで、マネージャーは的確に指導でき、担当者も自分の行動と成果のつながりを実感しながら成長できます。
定義したプロセスやKPIを実際の行動に落とし込むには、成果だけでなく「どう行動したか」も評価対象に含める必要があります。人は評価される行動を選びます。売上だけを基準にしていると、短期的な数字を優先し、提案の質やプロセス改善が軽視されてしまいます。
たとえば、インセンティブの評価項目に「KPI達成度」「ナレッジ共有への貢献」「チームメンバーの支援」といった行動指標を追加すると、現場が自然とプロセスを意識するようになります。
また、資格取得やロープレ成果へのポイント付与など、金銭以外のモチベーション設計も効果的です。結果だけでなく、そこに至る行動も正当に評価することで、数字に強い人も育成に強い人も報われる組織に変わります。
営業の再現性を高めるには、個人の経験や成功事例をチーム全体で共有し、誰でも学べる仕組みを整えることが欠かせません。
たとえば、成果の出た提案資料や商談トークを、GoogleドキュメントやNotionなど全員がアクセスできる場所にまとめておきます。Slackには「成功事例共有」チャンネルを設け、商談でうまくいったポイントを投稿してもらうのも効果的です。
マネージャーは投稿を拾って称賛し、良い実践を全体に広げていきます。こうした小さな共有を続けることで、「学び合うのが当たり前」という意識が定着します。さらに、ノウハウ共有への貢献を評価項目に含めると、自然と発信が増え、チーム全体のレベルアップにつながります。
下記の資料では、インサイドセールスの基本的な業務と役割を理解できる内容を紹介しています。併せて、効果の出る顧客対応など、新人のインサイドセールスに役立つ内容もまとめていますので、ぜひご活用ください。
定義したプロセスやKPIを継続的に運用するには、SFAやCRMといった営業ツールの導入が欠かせません。
人の記憶や手作業に頼る管理では、情報の抜け漏れや分析精度の低下を招きます。ツールを使えば、商談履歴や活動記録を自動で蓄積でき、データに基づく改善が可能になります。たとえば、SFAでフェーズ別の失注率を可視化すれば、どの段階で課題が生じているかを一目で判断できます。
導入直後は操作に慣れるまで時間がかかりますが、運用ルールを明確にして習慣化できれば、営業担当者が顧客対応に集中できる時間を確保できます。
ただプロセスを設計しただけでは、営業の再現性は定着しません。現場で実際に運用し、数字の変化を見ながら修正を重ねることで初めて機能します。そのためには、週次ミーティングや案件レビューで現場を巻き込み、KPIモニタリングによる継続的なフィードバックを欠かさないことが重要です。
ここでは、再現性のある営業組織を実際に動かし、成果を出し続けるための具体的なポイントを解説します。
再現性を定着させるには、現場が主体的に学び合う場を設けることが欠かせません。定例会議では進捗報告だけで終わらせず、成功事例・失敗事例を共有し、「次週にどう活かすか」「同じミスを防ぐには何を変えるか」まで具体的に議論します。
こうした双方向のレビューを繰り返すことで、担当者に当事者意識が芽生え、行動改善が自発的に進みます。また、新人や若手は他メンバーの実例から学べるため、成長のスピードが加速します。
マネージャーや責任者は、議論の方向性を整理し、学びを次のアクションに落とし込む役割を担いましょう。
設定したKPIは、SFAなどのツールを活用して定期的に可視化し、データに基づいた改善サイクルを回していくことが重要です。
たとえば「アポイント数は達成しているが商談化率が低い」という場合、データを確認すると初回ヒアリングの実施率が不足している、といった課題が見えてきます。このように数字の裏側にある行動を特定し、「次回はヒアリング項目を3点追加して確認する」といった具体的な改善策を設定します。
KPIは結果を評価するためのものではなく、行動を改善するための指標です。マネージャーは、数字の達成度ではなく行動の質を見てフィードバックし、担当者とともに改善を重ねることで、チーム全体の再現性を高めていきましょう。
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本章では、GrandCentralが支援した2社の営業コンサルティングの事例を紹介します。
SalesforceとTHE MODEL型の営業プロセスを連携させ、属人的な営業スタイルから脱却し、データに基づいた営業の仕組み化を実現した事例を紹介します。
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結果として、従来の属人的な営業体制から脱却し、営業活動の効率化とデータ蓄積のルーティン化に成功しています。
属人営業からの脱却。 Salesforce×THE MODELで実現した営業組織の仕組み化。
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営業の再現性向上は、プロセスの可視化、KPI管理、ツールの最適化、人材育成、文化醸成といった多岐にわたる要素が複雑に絡み合う壮大なプロジェクトです。一部分だけを切り取って改善しても、多くの場合、現場に定着せず失敗に終わる可能性が高い傾向にあります。
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