トップセールスの退職で売上の急落や営業ノウハウの消失、ブラックボックス化した顧客情報など、営業組織の属人化にはさまざまなリスクがあります。
営利企業として売上を安定させるためには、トップセールスだけに依存せず、組織全体で成果を上げられる体制づくりが欠かせません。しかし現実には、「どこから着手すべきかわからない」「トップ以外が売上を担うイメージが持てない」と感じ、属人化からの脱却に踏み出せない企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、営業が属人化する原因や属人化のリスク、実際に属人化から脱却した事例を解説します。トップセールスに依存しない営業体制を築き、持続的に成果を出す組織づくりの参考にしてください。
営業の属人化とは、特定の社員の知識や経験に過度に依存し、「その人がいなければ業務が回らない・成果が出ない」という再現性の低い危険な状態を指します。
属人化した組織では、「個人の成果」と「組織の成果」が分離しがちです。そのため、担当者の退職や異動といった不確実な要因で、売上全体が大きく揺らいでしまいます。
さらに、営業情報やプロセスが担当者個人の中に閉じてしまうことで、組織としての学習が進まず、売上の安定化や計画的な人材育成が困難になります。結果として、短期的にはトップセールスで数字を維持できても、中長期的には機会損失や競争力低下を招きます。
ここでは、営業組織に属人化が発生する根本的な原因を3つ解説します。
営業の属人化が進むもっとも大きな原因のひとつは、情報やノウハウを共有する仕組みが存在しないことです。個人のもつ顧客情報や成功事例といったノウハウを組織が管理せず、特定の担当者が所持しているために、ブラックボックス化しています。
SFAやCRMといった営業支援ツールを導入していても、入力ルールが曖昧だったり、そもそも現場の活動スタイルに合っていなかったりするため、結局は活用されず形骸化しているケースも少なくありません。
成功した提案資料やヒアリングシートが共有フォルダで適切に管理されず、必要なときに誰もアクセスできない状況では、メンバーは常にゼロから自分のやり方で業務を進めるしかありません。
このような環境では、組織としての学習効果が生まれず、トップセールス以外の担当者の成果は伸びにくい傾向です。結果として、特定の担当者のみの売上に依存することとなり、組織の生産性に偏りが生じてしまいます。
トップセールスに情報共有の必要性を与えられてない場合、情報はさらにブラックボックス化し、属人化が強まってしまいます。
属人化の背景には、評価制度が個人の売上目標の達成率といった過度な「成果至上主義」の体制が関係します。チームへのノウハウ共有や後輩の育成といった「組織貢献」が評価項目に含まれておらず、多忙な営業担当者が手間のかかるデータ入力を後回しにしたり、自身の成功手法を共有することにメリットを感じなかったりします。
とくにトップセールスにとっては、自分のノウハウが強みそのものであるため、共有に抵抗を感じるケースもあります。マネージャーが情報共有の重要性を説かず、営業会議が単なる個人の進捗報告の場で終わっていれば、仕組みとして定着することもありません。
情報共有を「作業」ではなく「成果を高める行動」として浸透させるには、評価制度やマネジメントの仕組みを通じて、その価値を組織全体に根付かせることが大切です。
営業活動の進め方や品質が個人の力量に任され、標準化されたプロセスが存在しないことも、属人化を助長する原因です。
ターゲット顧客の定義、初回アプローチの方法、商談でのヒアリング項目、提案書のフォーマット、クロージング後のフォロー体制といった一連の営業プロセスが標準化されていないため、担当者によって営業品質にばらつきが発生します。これでは、組織としての「勝ちパターン」を確立し、再現性を高めることが困難です。
また、新人育成の体制が整っておらず、OJTが「先輩の背中を見て学べ」という精神論に終始しているケースも、属人化する大きな要因です。
体系的な研修プログラムやマニュアルがなければ、新人はいつまでも独り立ちできず、チームの売上は二極化してしまいます。ベテランは自身の経験則で動き、新人は放置されるという環境では、組織全体のスキルは底上げされず、結果的に一部のハイパフォーマーに依存し続けるしかない状況から抜け出せなくなります。
営業属人化のリスクとして、以下の2つが挙げられます。
トップセールスの退職や異動でノウハウが失われるリスクもあります。
別の担当者への引き継ぎを想定しているかもしれませんが、、その「個人」を信頼して取引を継続している顧客も多く、担当者の変更がそのまま取引終了(失注)に直結するケースも少なくありません。
依存していた売上だけでなく、顧客との信頼関係や本来組織に蓄積されるはずだった成功ノウハウといった「無形資産」も失われかねません。特定の担当者に売上が集中している場合、その退職や異動がきっかけで、組織全体が大きく揺らぐリスクがあります。
営業の属人化は、社内だけでなく社外、すなわち「顧客」に対しても深刻な悪影響を及ぼします。担当者によって提供される情報や提案の質がばらつき、顧客体験(CX)を損なう原因となります。
トップセールスは顧客の質問に的確に答えられますが、経験の浅い担当者は基本的な質問にも対応できないことがあります。その結果、「担当者によって言うことが違う」と顧客に不信感を与え、長期的な関係構築に悪影響を及ぼします。
属人化した営業チームの最大の特徴は、成果が「個人のスキル」に依存しており、組織としての再現性や安定性が欠けていることです。
一見するとトップセールスが業績を牽引して活気があるように見えても、実際には情報やプロセス、マネジメント、育成が標準化されておらず、常に不安定な状態にあります。
また、属人化している営業チームには下記の特徴も見られます。
上記にどれかひとつでも当てはまる場合、属人化の影響はすでに顕在化している可能性があります。次の章で紹介する解消策を参考に、早めの対策を検討することが重要です。
ここでは、営業の属人化を解消する方法を5つ紹介します。
属人化を解消するには、まず「自社がどの程度属人化しているのか」を可視化し、「なぜ解消したいのか」という目的を組織で共有することが重要です。
感覚的な危機感だけでは現場や経営層を動かせません。データで実態を示すことで納得感が生まれ、組織全体で危機意識を持てるようになります。これが、改革を一丸で進める推進力につながります。
実態の把握には、たとえば「成果の基準を定め、未達の担当者数を確認する」「営業プロセスやマニュアルの実効性を検証する」といった方法があります。こうした確認を積み重ねることで、属人化の度合いを具体的に見える化できます。
SFAなどのツールを導入する前に、情報共有が「個人の負担」ではなく「チームの成果を高め、個人も評価される価値ある活動」であるという組織文化を醸成しましょう。
どれほど優れたシステムを導入しても、メンバー自身に「共有するメリット」が感じられなければ、情報は入力されず活用もされません。仕組みやツールが真に機能するためには、それらを受け入れ、積極的に活用しようとする組織風土が欠かせません。
たとえば、トップセールスによる毎日15分、オンラインで「昨日の成功事例」「今日の学び」などを共有する場を設けます。こうした労力をインセンティブや基本給に組み込むなど、社風に適した工夫が必要です。また、日頃から積極的にコミュニケーションを取り、情報共有や相談が自然に行える環境を整えることも重要です。
まずはSlackやTeamsで情報共有の専用チャンネルを作り、「成功事例」や「お客様からの感謝の声」を投稿するといった、ポジティブで小さな共有活動から始めてみると良いでしょう。
ターゲット顧客の選定からクロージングまでの一連の営業活動を標準化することが、組織全体の営業力を底上げし、成果を安定させるための要です。
営業の成果が個人のセンスや経験に依存していると、成果は安定せず、新人育成にも時間がかかります。そこで全員が従える「型(プロセス)」をつくれば、担当者は安心して動け、組織としても改善や育成を効率化できます。
たとえば標準化されたプロセスをもとに研修を行い、「標準値からどのくらい乖離しているのか」を定期的にフィードバックすれば、着実に水準へ近づけます。完璧を目指すのではなく、まずはトップセールスの事例をもとに「60点の完成度」でマニュアルを作成し、現場で使いながら改善を重ねていくのが現実的です。
下記の資料では、インサイドセールスの基礎スキルを体系的に習得し、早期に戦力化するためのポイントをまとめています。組織として営業力を平準化し、ナレッジを蓄積していく仕組みづくりの参考にしてください。
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属人化を防ぐには、個人の売上だけでなく、情報共有や後輩育成といったチームへの貢献も評価に含めることが重要です。
人は評価されることに時間を使います。評価が売上だけであれば、情報共有や新人のフォローは後回しになってしまいます。だからこそ、制度を見直し「組織の方向性」と「個人の行動」を一致させる必要があります。
たとえば、以下のように一度社内の評価制度を見直してみましょう。
評価制度は、会社が社員に示す最も強力なメッセージです。経営層も巻き込み、チームで成果を上げる行動が正しく評価される仕組みに変えていくことが大切です。
属人化の解消にはITツール(SFA・BIツール)の導入も欠かせません。
ITツールは「文化」「プロセス」「評価」を支える手段です。情報共有やプロセス管理、データ分析を効率化し、改革を継続させる仕組みとして機能します。
ITツールを導入すれば、上司は担当者の状況をすぐに把握でき、課題の特定と改善を繰り返すことでチーム全体の生産性を安定させられます。
属人化を防ぐには、自社の課題や方針に合ったツールを選ぶことが大切です。操作がシンプルで現場が使いやすいものから導入を検討してみましょう。
ここでは、Grand Centralがどのように属人化を解消し、営業組織の安定成長を実現したのかを示す実際の事例を紹介します。
株式会社イビコン様は、旧来の「属人的な営業モデル」から脱却し、Salesforceの見直し、担当者の育成、マニュアルや管理体制の整備を改善し、データドリブンな営業組織へと改革した事例を紹介します。
変革前の同社は、旧来の営業モデルを改革するためにSalesforceを導入したものの、社内研修やツールの活用に課題を抱えていました。
そこでGrand Centralが支援先として、業務フローの見直しやSalesforceの活用方法などのサポートを担当。営業活動の効率化とデータ蓄積のルーティーン化し、社内メンバーのアポイントに対する意欲の向上に成功しました。
旧来の営業モデルから「Salesforce×THE MODEL型営業」の導入で、属人的なやり方から脱却した成功事例です。
属人営業からの脱却。 Salesforce×THE MODELで実現した営業組織の仕組み化。
株式会社ヤマヒロ様は、Salesforce環境と営業プロセスを整えることで、社内の定着が進み属人的な営業管理の脱却に成功しています。
同社は、これまで営業の管理をWordで行なっていました。しかし属人的な営業管理を脱却する目的でSalesforceを導入。効率よく、効果的に導入するためにGrand Centralにご依頼いただきました。
営業プロセスが定まっていない課題を特定し、営業の型の構築と型に合わせたSalesforceの整備を実施。初期段階の定着化を重視してシンプルに設計し、担当者全員がSalesforce上で活動状況を入力できるようになったことで、リアルタイムで各営業メンバーの活動状況の詳細を把握できるようになりました。
レベル感と社内の理解度に合わせたSalesforceの整備で、旧来のWordを活用した属人的な営業モデルから脱却した成功事例です。
顧客の営業フローに最適なSalesforce導入支援で、営業活動を可視化し、属人化を脱却
Grand Centralは、営業支援のプロフェッショナル集団です。前述で紹介した成功事例のように、旧来の営業モデルを改革し属人化からの脱却や、セールスDXなどの支援を行っています。これまで累計40400社の支援を実施し、顧客満足度は95%と高い評価を受けています。
Grand Centralが提供するセールスイネーブルメントでは、営業の担当者全員が成果を安定して創出できるように、組織改革のコンサルティングや社内研修、アセスメントを提供しています。
たとえば「営業スキルが属人化している」「営業プロセスが整っていない」「新人の教育に時間がかかりすぎている」などの課題解決を行なっています。お客様の課題に合わせて完全オーダーメイドのカリキュラムを構築し、安定した売上を作る組織へと改革するための支援をしています。
経営層や現場メンバーへのヒアリングをもとに営業課題を抽出し、「どの市場を狙うか」「どんなプロセスで成果を出すか」を具体的に設計します。戦略立案だけで終わらず、実行フェーズまで伴走するため、属人化や場当たり的な営業から脱却し、再現性のある営業モデルを構築できます。
現役トップセールスが講師となり、テレアポ・商談・クロージングといった現場に直結するスキルをオーダーメイドで研修化します。1人のエースに依存するのではなく、「平均点が高い営業チーム」へと底上げします。
商談の進め方を第三者視点で分析し、「ヒアリング力」「提案力」「クロージング力」などをステップごとに数値化。強み・弱みを可視化することで、改善すべきスキルが一目でわかり、研修やOJTの優先順位を明確化できます。結果として、担当者一人ひとりの成長スピードを加速させ、組織全体の成果向上につながります。
営業の属人化は、事業の継続性そのものに関わる経営課題です。しかし、現状を見える化し、組織全体で目的を共有できれば、改善は十分に可能です。まずは、自社の営業がどこまで個人に依存しているのかを洗い出すことから始めてみてください。
もし何から始めるべきか迷った際は、Grand Centralにご相談ください。日本でもトップクラスのコンサルタントが寄り添い、満足のいく結果になるよう支援します