同行営業の準備・流れ・学びとするためのポイントまで解説

同行営業を進めているものの、上司やマネージャーが付き添うだけになっていませんか。
本来の同行営業は、訪問の目的や役割分担を事前に揃え、その場で何を観察し、どのポイントを振り返るのかまで設計したうえで実施するものです。こうしたプロセスが整っていると、担当者は営業の進め方を具体的に掴みやすくなり、日々の活動に落とし込めるようになります。
本記事では、同行営業の概要や具体的な流れについて詳しく解説します。同行営業をより実務的に機能させるためのヒントとしてご活用ください。
同行営業とは

同行営業とは、上司やマネージャーが新人・若手と一緒に商談へ入り、育成と受注の両面を支えるための営業手法です。単なる付き添いではなく、商談の進め方を実際の場で学ばせつつ、キーマンとの接点づくりや受注率の向上にもつながります。
経験のある上司が同席することで、若手の理解が深まり成長が早まるだけでなく、難易度の高い商談にも組織として取り組めるようになります。
同行営業の目的

前述で解説したとおり、同行営業には人材育成、商談の成功、キーマンとの接点創出の3つの目的があります。同行営業を進める際は目的を明確に決め、下記の表のとおり戦略的に実行することで効果を発揮します。
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目的 |
主な行動 |
ゴール |
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①人材育成 |
原則として新人・若手が商談の主導権を握り、上司・マネージャーは観察とアフターフォローに徹する。 |
新人・若手の独り立ち・自信の向上 |
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②商談の成功 |
上司は価格交渉やクロージングなど、組織の信頼性が必要な局面でのみ介入する。 |
商談の成功と新人・若手の成功体験の創出 |
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③ キーマンとの接点創出 |
上席が同席することで、「こちらも組織としてコミットする」姿勢を示し、お客様側の決裁者(キーマン)を引き出す。 |
要な関係構築の促進と決裁者と面談する機会を作る |
上記のように同行営業の目的を決めて、マネージャー・上司と部下の間で共有し、学びの機会を作りましょう。
同行営業で期待できるメリット3つ

この章では、同行営業で期待できるメリットについて解説します。
- 新人や若手が実践的な経験を積める
- 顧客との信頼関係を深められる
- 組織全体の営業力の向上につながる
新人や若手が実践的な経験を積める
同行営業では、座学やロープレイでは得られない現場の温度に触れられます。顧客がどんな点で迷い、どんな質問に反応するのかをその場で知ることで、学んだ知識が実践に結びつきやすくなります。
また、上司という安全網があるため、新人・若手は失敗を恐れず商談を任され、対応力を磨けます。商談後にすぐ振り返りができるため、マニュアルでは学べない判断や言葉選びが身につき、独り立ちまでのスピードを早められる点も大きなメリットです。
顧客との信頼関係を深められる
同行営業は、「担当者だけでなく組織として支える」という姿勢を顧客に伝えられる場でもあります。
上司やマネージャー、エンジニアが同席することで、顧客は自分たちの課題を真剣に受け止めてもらえていると感じやすくなります。たとえば、技術的な疑問にその場で回答できたり、価格調整の判断が即時に行えたりすれば、商談が滞らず、安心して検討を進められる状況になります。
こうしたやり取りを積み重ねることで、担当者個人に依存しない「企業としての信頼」を築きやすくなり、顧客の意思決定も前に進みやすくなります。
組織全体の営業力の向上につながる
同行営業は、個人の成長だけでなく、属人的な営業スタイルから抜け出し、組織全体の力を高める取り組みでもあります。
上司やマネージャーが商談を観察して行うフィードバックには、優れたヒアリングの進め方や、顧客の実際の反論など、日々の営業で得にくい学びが含まれています。こうした内容を録音データとして残し、社内で共有することで、経験値を特定の個人に依存させずに広げることができます。
たとえば、同行で手応えのあった質問をSFAに記録し、週次ミーティングで検討すれば、トップセールスの成果につながる動きをチーム全体で再現しやすくなります。
この循環が続くことで、指導する側(マネージャー)の育成力も高まり、結果として組織全体の営業レベルが安定して引き上がります。
同行営業を進める流れ

同行営業の事前準備は重要なフェーズであり、マネージャー・上司先導で担当者を引っ張り、情報収集やゴールの明確化を進めていく必要があります。
この章では、以下の流れを理解し、同行営業の目的を達成できるよう進めましょう。
- 1.顧客情報の収集や商談のゴールの明確化
- 2.スケジュールの調整
- 3.資料の準備
1.顧客情報の収集や商談のゴールの明確化
同行営業の成功は、事前準備で決まるといっても過言ではありません。重要なのは、商談のゴールと上司と部下の役割分担を明確に定義し、明文化することです。
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明文化の項目例 |
詳細 |
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部下の準備 |
SFA/CRMの履歴を確認し、過去のやり取り、顧客の組織図、意思決定者を把握する。 |
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ゴール設定 |
「商談後にどこまで進めるか(例:課題認識の取得→次回は決裁者提案)」を具体的に決める。 |
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上司の役割 |
部下の仮説に対し、競合優位性・類似事例を基に壁打ちし、着地点を明確にする。 |
これらの準備漏れを防ぐため、事前準備チェックリストをテンプレート化し、商談前にかならず共有するルールを設けるとよいでしょう。
2.スケジュールの調整
スケジュール調整では、ただ日時・場所の調整をするのではなく、社内の事前・事後レビュー時間の確保と、顧客への録音同意の事前打診までを含めたプロセスとして設計することが重要です。
まず、部下と上司が商談後に振り返る時間をあらかじめ確保します。多くの同行営業が「実施して終わり」になってしまうのは、この振り返りの枠が取られていないためです。
また、商談内容を記録する場合は、コンプライアンス上、顧客への録音・録画の事前同意が欠かせません。事前の打診をスケジュール調整の段階に含めることで、当日のやり取りが円滑になります。
リモートで同行する場合は、URL発行と合わせて音声チェックや画面共有の確認まで時間に組み込むことで、開始直後のトラブルを防げます。
3.資料の準備
資料の準備は、提案書を作るだけの作業ではありません。商談を主導し、顧客の疑問にその場で答え切るための下準備として位置づける必要があります。
まず、顧客の企業情報や過去の議事録を踏まえ、当日のアジェンダと商談の着地点を資料に明記します。これにより、説明の順番がぶれず、部下が商談を主導しやすくなります。
次に、価格・競合・運用に関する質問など、想定される反論に備えて「事例・比較表・根拠データ」を別途用意します。メイン資料だけでは一方的な説明に流れやすいですが、補足資料があれば、疑問が出た瞬間に根拠を提示でき、商談の流れを途切れさせずに進められます。
また、育成を目的とした同行では、部下がこれらを自分で作ることが重要です。部下が仮説を立てて資料に落とし込み、上司が確認する流れによって、商談設計の力が着実に伸びていきます。
4.商談におけるマナーの研修
同行におけるマナーとは、部下の信頼し、育成を最大化するための戦略的な役割定義です。
この役割定義が曖昧だと、上司の不用意な介入が部下の営業機会と成長意欲を奪い、顧客を混乱させるリスクを招きます。マネージャーは、マナーをただの作法ではなく、組織のリスク管理と捉えるようにしましょう。
リスクを防ぐため、以下の具体的な行動ルールを同行営業前に共有しておくのがおすすめです。
- ルール:原則はメモに徹し、部下が回答に悩みアイコンタクトを送ったときのみサポートする
- 上司・マネージャーのポジション:メインスピーカーである部下を立て、上司・マネージャーはサポート役に徹する座席位置を徹底する
あくまで主役は部下であるという意識こそが、組織全体の営業力向上に直結します。
5.訪問・商談・アフターフォロー
同行営業のゴールは、商談の結果ではなくプロセスに着目した再現性の高いフィードバックと質の高い議事録作成です。訪問・商談を経て、よかったポイント、改善すべきポイント、今後の課題と目標を同行者側から共有しましょう。
ここでのポイントは、商談直後、移動中など時間を空けずに、SBIモデルなどの構造的な型を用いて具体的な行動課題に落とし込むことです。
このフィードバックで得た事実、顧客の本音、ネクストアクションを議事録に残すことが重要です。これにより、単なる一時的な成長ではなく、組織全体の営業力底上げへとつながります。
新人や若手に同行営業で学びを与えるためのポイント

この章では、同行営業で新人・若手に学びの機会を与えるためのポイントを紹介します。
- 課題を客観的に把握し原因を特定する(アセスメント)
- 現場で使える武器(型)を提供し実践的に訓練する
- 壁打ちとキーアクションをもとに定量的・定性的なフィードバックを行う
課題を客観的に把握し原因を特定する(アセスメント)
新人育成のための同行では、上司・マネージャーは口を挟まず、まず「何が起きているか」をそのまま受け取ることが大切です。商談中のやり取りを正しくつかめていないと、本人が次に何を直せばいいのかが見えなくなります。
フィードバックを主観で語らないために、商談中は「部下9:上司1」の比率を守り、質問・提案・対応の仕方を簡単なチェック項目で記録します。商談が終わったあとに、どの場面で止まったか、どこが良かったかを一緒に確認しやすくなります。
また、同行前に「今日はニーズの深掘りの進め方を中心に見るね」とテーマを共有しておくと、指摘する内容がぶれません。部下もどこに気をつければいいか明確になるので、商談に入りやすくなります。
現場で使える武器(型)を提供し実践的に訓練する
課題が見えた後は、部下が商談で実際に使える型をひとつずつ扱えるように練習します。頭で理解させるのではなく、試してみてすぐ振り返るという短いサイクルで進めることがポイントです。
たとえば、ヒアリングが弱い場合は、SPIN話法を使ったロープレを行い、どの質問で相手が話しやすくなるかを一緒に確認します。実際の顧客に近い状況で練習することで、商談中に迷わず質問を組み立てられるようになります。
また、最初は上司が商談の一部だけを担当し、徐々に部下へ主導権を渡すという進め方を決めておくと、無理なくレベルを上げられます。段階を踏みながら型が自然に使えるようになり、実戦でも安定して成果を出せるようになります。
壁打ちとキーアクションをもとに定量的・定性的なフィードバックを行う
同行営業で最も重要なのは、商談が終わった直後のやり取りです。時間があくと細かな場面が抜け落ち、指摘が曖昧になってしまうため、その場の記憶が鮮明なうちに話すことが欠かせません。この際、印象や感情ではなく、実際に何が起きたのかを入口に話します。
たとえば、「価格の話題が出たとき、お客様が少し身を引いたよね。あの瞬間、もう一歩踏み込めば課題を聞けたと思う」のように、目の前で起きた場面を切り出して伝えます。そのうえで「次は、価格に触れられたらどういう理由でその金額になるのかを先に整理して伝えてみよう」と、次の行動に変換できる形まで落とし込みます。
また、事前に上司が壁打ちに入り、部下が立てた仮説を把握しておくと、想定していた展開と実際の展開がどこでずれたのかを一緒に振り返れます。これにより、新人が自分の判断の精度を客観的に見直せるようになり、次の商談への取り組み方が変わります。
Grand Centralができること

Grand Centralは、品質至上主義のセールスエキスパートとして、セールスマーケティングの上流から下流まで支援を提供しています。大企業からスタートアップまで400社以上の支援を行い、顧客満足度・プロジェクト継続率は95%を超えています。
キーエンスやオープンハウス出身のトップセールスが、「KPIが達成できない」「セールス部隊のリソースが不足している」「ノウハウが足りない」といった課題解決を支援します。
この章では、Grand Centralが提供するサービスや特徴を紹介します。
Grand Centralが提供するセールスイネーブルメントとは
Grand Centralのセールスイネーブルメントでは、ノウハウやナレッジ不足、営業の属人化からの脱却を支援するサービスを提供しています。
オーダーメイドの支援内容で営業力の強化・ナレッジ共有を行い、組織全体で安定した成果を創出できることを目指しています。またキーエンスやオープンハウス、マイナビ出身のコンサルタントが客観的な視点で組織・担当者ごとの課題も発見します。
「同行営業の進め方がわからない」「実際に効果がでているかわからない」といった不安やお悩みもお気軽にご相談ください。
Grand Centralならではの3つの特徴
Grand Centralには大きく3つの特徴があります。
- 戦略設計から伴走するコンサルティング
- 平均値を底上げするコーチング研修
- 客観的に可視化するアセスメント
Grand Centralでは、伴走型のコンサルティングを提供しています。クライアントと二人三脚で課題解決に向けて歩み、将来的には自走できるよう戦略立案から一部の課題解決まで支援します。
たとえば、「同行営業の効果がイマイチでていない」「新人や若手が育たない」という課題には、トップセールスによるオーダーメイドの営業研修を提供しています。
テレアポ研修やオンライン商談研修、ヒアリング研修などを行い、最終的にはトップセールスに依存しない、組織全体で成果をだすチームの構築を目指します。
どのような営業課題でも、Grand Centralにお任せください。キーエンス出身のトップセールスによるサポートを提供します。
Grand Centralのご支援実績

株式会社イビコン様では、THE MODEL型の営業体制を目指してSalesforceを導入していましたが、属人的な営業スタイルが残り、社内研修やSalesforceのサポートだけでは仕組みとして定着しない状況が続いていました。
Grand Centralでは、導入前の綿密な打ち合わせと社員10名へのヒアリングを踏まえ、現場の声を反映した改善方針を提示。そのうえで、業務フローの見直しやSalesforceの設計改善と並行して、実際の訪問営業に複数回同行し、商談中のやり取りに対してその場でフィードバックを行う支援を続けました。
また、Salesforceのマニュアルや活動管理表、営業フローの整理資料など、現場で使いやすい成果物の提供も並行して行っています。これらにより、営業活動の質が大きく向上した とご評価いただいています。
Grand Centralには、現場同行を含む実践支援に強いコンサルタントが在籍しています。訪問活動の改善、判断基準の言語化、THE MODELの定着など、営業現場で課題を感じている企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ

同行営業は、上司・マネージャーによる付き添いではなく、育成や商談の成功、キーマンとの接触機会を得るといった目的がある戦略的営業活動です。
目的をもって実行することで、新人や若手に実践の経験を積ませられる、顧客との信頼関係を構築できるといったメリットがあります。事前準備を徹底し、本記事で紹介した流れで同行営業を進めてみてはください。