営業における評価制度とは|制度導入の流れや評価基準を解説

組織の改革や新体制の構築にともない、営業組織の評価制度をどのように作るかどうか悩む経営者・マネージャーの方もいるでしょう。
評価制度は、担当者が働くうえで重要な要素です。評価制度を整備することで、モチベーションの向上や退職・離職のリスクを防げるといったメリットが期待できます。
本記事では、営業における評価制度の概要や導入のメリット、強い組織を作るために必要な評価基準を解説します。具体例や導入の流れも解説するため、ぜひ評価制度の整備にご活用ください。
この記事を監修したコンサルタント
目次
営業における評価制度とは

営業における評価制度とは、営業活動の再現性や生産性を高め、人材育成を促進し、組織全体の成果を最大化するための仕組みのことです。売上や契約だけを測るものではなく、成果、能力、姿勢といった3つの評価軸に基づき担当者を評価します。
従来の成果至上主義の評価制度では、「短期的な成果に偏重する」「リード品質による不公平感が出る」「企画やアイデアを出した担当者が評価されない」といった問題が発生しがちでした。
こうした状況のなかでSFA/CRMを導入しても、評価指標が曖昧だと評価者の主観が入り込み、結果として評価への納得感が得られず、優秀な人材の離職や組織のモチベーション低下につながるリスクがあります。
だからこそ3つの軸で評価する必要があり、担当者のモチベーションを高め、担当者・会社にとっても利点がある評価制度を整備することが求められます。
営業の評価制度を整備するメリット

この章では、公平で再現性のある営業評価制度を整備することが、組織にどのようなメリットをもたらすかを解説します。
- 生産性の向上が期待できる
- 退職や離職といった人材流出のリスクを防げる
- 担当者の成長につながる
生産性の向上が期待できる
評価制度で「成果につながる行動」を明確にすると、営業メンバーがどのプロセスに時間を使うべきかが揃います。結果として、判断のばらつきが減り、効果の高い活動にリソースを集中しやすくなるため、組織全体の生産性が向上します。
売上だけを基準にすると、何が成果を生む行動なのかを掴めず、担当者ごとに場当たり的な判断になりがちです。行動基準が設定されれば、現場では次のような変化が起こります。
- 「何にどれだけ時間を使うべきか」が明確になる
- 案件の停滞理由をプロセス単位で把握できる
- ボトルネックを特定し、行動を修正しやすくなる
この流れが定着すると、営業活動は属人的な勘ではなく、再現可能なプロセスに乗り、受注率も安定します。結果的として、組織全体の生産性向上につながります。
退職や離職といった人材流出のリスクを防げる
評価が曖昧な環境では、「どう見られているのか」「何を基準に判断されているのか」がわからず、不信感が少しずつ積み上がっていきます。とくに営業は成果の波が大きいため、数値だけで判断されると、努力やプロセスが置き去りになりやすく、納得感を失いやすくなります。
一方で、評価の基準が共有されている組織では、担当者は「どこを見られているのか「何を積み上げれば評価されるのか」を理解しながら働けます。判断の根拠が揃うことで、評価に対する不安も減り、働き続けるうえでの安心感につながります。
結果として、評価への不満が離職の引き金になる状況を防ぎ、組織との関係が中長期で安定しやすくなります。
担当者の成長につながる
適切な評価制度は、営業担当者の成長を促します。単に売上目標の達成率だけでなく、そこに至るプロセス(行動量や提案の質など)を評価項目に組み込むことが重要です。
このような評価指標により、担当者は「なぜ成約できなかったのか」「次はどのスキルを磨くべきか」という自身の課題を客観的に特定できるようになります。
ただの精神論ではなく、明確な評価に基づくフィードバックがあれば、担当者は納得感をもって課題の解決に取り組めます。結果として、上司の指示を待つのではなく、主体性の意識をもってPDCAを回せる人材への成長につながるでしょう。
強い営業組織を作る評価基準3つ

この章では、営業組織全体で成果を創出するために必要な評価基準を解説します。どのように評価をすればわからないと悩むマネージャーの方は、ぜひ参考にしてください。
成果(売上・利益・受注率など)
成果を評価する際は、売上や契約数だけではなく、利益や受注率、継続率、リピート率も評価基準として設けるようにしましょう。
たとえば、キーエンスのような強い営業組織では、短期的な数字と将来の利益につながる成果の双方を評価します。
単発の受注額だけでなく、リピート率やLTVも指標に含めることで、今月の目標を達成しつつ未来の売上も積み上げ、安定した売上を作る組織となります。
能力(課題解決力・提案力など)
能力で評価すべきは、リサーチ力や企画力、課題解決力などです。
たとえば、顧客自身も気づいていない本質的な課題を掘り起こすヒアリング能力は、トップセールスになるうえで欠かせない要素です。そのようなノウハウを言語化し、組織全体に共有した場合にも評価すべきといえます。
自分だけ売れるのではなく、組織全体で売上を作る能力や考え方を評価することで、属人化を防ぎ、組織全体の営業力を向上させます。
姿勢(責任感・チーム貢献など)
営業の評価制度では、成果と能力に加え、営業活動に対する姿勢も評価の対象としましょう。
たとえば、責任感ならタスクの納期遵守率を、チームの貢献度であればSFAへの案件ノウハウの入力数や若手への同行回数などを可視化して評価します。精神論ではなく行動レベルで定義し、評価のブレを防ぐことが大切です。
プロセスが評価される環境では、新人や若手が迷いにくくなり、日々の取り組みが前向きになりやすくなります。前向きさが共有の頻度を自然に高め、組織全体の活気につながります。
なお、リモート環境下では見えにくい努力を評価できず、マネージャーや上司の主観で判断がブレやすい点が課題です。定性的な姿勢評価であっても、具体的な行動に基づいた評価軸を作るようにしましょう。
営業組織の評価制度の具体例

営業組織の評価制度の具体例を紹介します。
|
評価項目 |
項目カテゴリ |
具体的な評価指標(KPI/行動事実) |
評価の目的 |
|
成果 |
① 売上・利益 |
・売上目標達成率 ・新規受注件数 ・粗利額(利益率) ・受注単価 |
組織戦略(利益重視かシェア重視か)への貢献度を評価する。 |
|
能力 |
① 基礎・計画 |
・ロジカルシンキング力 ・課題設定・計画力 |
営業活動の再現性を高めるための思考力を評価する |
|
姿勢 |
① 規律性 |
・SFA/CRMのデータ入力期限遵守率 ・報告提出率 ・会議への参加態度 |
チーム活動の基盤となる情報共有とコンプライアンスを評価する |
能力評価は、知識があるかではなく、「知識を使って顧客の課題を解決できた」という行動で評価基準を定義することが重要です。姿勢評価も主観ではなく、「SFAへの入力不備率0%」といった具体的な行動事実で評価しましょう。
上記の例のように、多角的な評価軸を導入することで、担当者は「何をすれば評価されるか」が明確になり、モチベーションと成果のバランスが取れた組織運営が可能です。
営業組織で評価制度を導入する流れ

この章では、営業組織で評価制度を導入する流れを解説します。
- 1.評価基準を明確にして組織全体で共有する
- 2.担当者ごとの目標を設定する
- 3.評価制度を運用しはじめる
- 4.フィードバックを行う
担当者の意見も取り入れず、いきなり導入しては反感を買う可能性があります。段階的な検証と丁寧なすりあわせが成功のポイントです。
1.評価基準を明確にして組織全体で共有する
評価制度を導入する際は、どのように評価しているか組織全体に共有しましょう。透明性を重視することで、担当者の中で納得感が生まれ、成果に対するモチベーションが向上します。
まずは評価軸を成果、能力、姿勢の3つにわけ、役職にあわせてその分配を設定します。たとえば、新人社員であれば、「成果30%:能力40%:姿勢30%」と設定します。数字が出にくい時期でも、スキル習得や取り組み姿勢を高く評価することで、成長を後押しとなるでしょう。
一方で若手やベテランの場合は、「成果70%:能力20%:姿勢10%」と実力を重視した評価とするのもひとつのマネジメント戦略です。このように、どのように評価しているかを明確にすることで、担当者は納得感をもって営業活動に取り組めるようになります。
2.担当者ごとの目標を設定する
評価基準を設定し組織全体に共有したあとは、担当者ごとの目標を設定します。
ここでのポイントは、マネージャーや上司が一方的に目標(ノルマ)を決めるのではなく、本人と話し合いを進めたうえで、実現可能な目標を設定していくことです。無理な目標は担当者の意識を下げるだけですが、「工夫と努力があれば達成できる」という基準は担当者の行動を促し、達成できたときに大きな成長とつながります。
マネージャーは定期的に中間ミーティングを設けて、都度目標設定の見直しを行いましょう。
3.評価制度を運用しはじめる
運用開始にあたり、まずトップセールスの過去実績(例:月間30契約)から逆算した「準値(例:20契約)を基準として設定します。データに基づく標準値が、評価の土台となり、公平性を担保します。
次に、組織全体で導入する前に5〜10名で3ヶ月間のパイロット運用を実施し、評価制度の妥当性や適正な標準値かを検証します。最初から完璧な制度を目指すのではなく、次章で触れるフィードバックを重ねながら、組織の実態に合う形へ精度を高めていくことが大切です。
4.フィードバックを行う
評価制度の成否を決めるのは、評価結果を伝える1on1面談の質です。
「頑張りが足りない」といった主観的・抽象的な表現を排し、評価制度やSFAに基づいた客観的な事実のみを用いて伝えることです。月末にまとめて査定するのではなく、月の上旬・中旬・下旬と継続的にフィードバックを行うことで評価制度が定着していきます。
客観的なフィードバックこそが、担当者の納得感を高め、成長を促進させる要素となります。
営業の評価制度を導入する際のポイント

この章では、設計した評価制度を形骸化させず、組織に定着させるために押さえるべきポイントを紹介します。
- 成果や能力だけではなくプロセスや貢献度でも評価する
- 担当者からも人事評価に対するフィードバックを受ける
成果や能力だけではなくプロセスや貢献度でも評価する
公平性と育成を同時に担う評価制度にするには、売上などの業績(成果)や個人の能力(スキル)だけでなく、プロセスや貢献度でも評価しましょう。
たとえば、以下をプロセス指標として設定します。
- SFAからアプローチ数
- 商談数
- 提案到達率
- 次回商談設定数
さらに、営業資料の整備・更新回数、新人へのロープレ同行サポート回数などを組織の貢献に関するKPIとして設定し、評価全体の10〜20%程度の指標とします。
業績だけで評価すると、短期的な数字づくりに偏りやすく、行動の質や育成が後回しになります。特にリモートワークでは、日々のプロセスやナレッジ共有の動きが目に見えにくく、SFAの入力状況や通話ログ、Slackでのやり取りを評価の土台にしなければ、公平さが保てません。
そこで、売上に至るまでのプロセス指標やチームへの貢献度を評価項目として組み込みます。たとえ業績が未達でも、プロセスの積み上げやチームへの支援が認められる仕組みになれば、担当者も取り組みの方向性をぶらさずに済み、組織全体の底上げにつながります。
担当者からも人事評価に対するフィードバックを受ける
評価制度を定着させるには、評価する側からの一方的なフィードバックで終わらせず、担当者側からも評価制度自体へのフィードバックを受け付けることが大切です。
どれほど細かく評価制度を設計しても、「このアクションに関する評価が曖昧」「特定マネージャーの評価が厳しすぎる」といった現場の不満が起こります。これらの声を放置すると、制度への不信感から担当者のモチベーションや生産性が低下し、最終的に評価制度が形骸化してしまいます。
評価制度に関する匿名アンケートを四半期ごとに行い、「どの基準がわかりづらいか」「どのフィードバックが役に立ったか」といった声を定期的に吸い上げる場をつくりましょう。担当者が率直に意見を伝えられる仕組みがあれば、評価への不安や誤解を早めに解消しやすくなります。
中長期の視点で取り組む
組織として成長していくためには、評価制度に中長期の視点を組み込むことが不可欠です。目先の業績だけでなく、将来の売上につながる投資的な営業活動も評価しましょう。
たとえば、「新規リード獲得のための活動の質と量」や、「既存顧客との関係構築のための活動(LTV向上につながる提案頻度)」などの評価指標です。さらに、商材や市場に関する知識の習得や営業プロセスの効率化提案といった項目も組み込みます。
これらの項目を評価することで、メンバーは目先の数字だけでなく、組織が成長するための行動にも意識を向けられます。
Grand Centralができること

Grand Centralは、これまで大手企業、ベンチャー企業、またスタートアップを含め、累計400社以上の支援を行ってきました。顧客満足度、プロジェクト継続率は95%を超え、長年営業の現場で経験を積み上げたトップセールスが在籍し、戦略の立案や人材育成の研修、アポイント獲得の代行など多数のサポートを提供しています。
この章では、Grand Centralが提供するサービスや特徴を紹介します。
Grand Centralが提供するセールスイネーブルメントとは
Grand Centralでは、営業組織が継続して成果を生み出せるよう、組織づくりから人材育成までを一貫して支援しています。
営業プロセスの整理、評価基準の設計、SFAの運用定着といった組織面の課題に対してコンサルティングを行い、必要に応じて研修や個別コーチングも提供します。現場の状況に合わせて内容を設計しており、属人的な営業スタイルから脱却し、変化に強い営業組織づくりを支援します。
Grand Centralならではの3つの特徴
Grand Centralには大きく3つの特徴があります。
- 戦略設計から伴走するコンサルティング
- 平均値を底上げするコーチング研修
- 客観的に可視化するアセスメント
Grand Centralでは、クライアントとGrand Centralの二人三脚で課題解決に向けて伴走するコンサルティングや、スポットで支援する営業代行を提供しています。
たとえば、新規事業の営業の開拓方法がわからないといった場合には戦略立案の支援を、セールスの人手が足りていないという課題には代行支援のサポートを実施しています。
そのほかにも研修では、現役トップセールスが講師となり、テレアポ・商談・クロージングを会社の状況にあわせてオーダーメイドで提案し、組織全体で売上を作れるようになることを目的としています。
Grand Centralのご支援実績

株式会社イビコン様では、THE MODEL 型の営業体制を目指してSalesforceを導入していましたが、属人的な営業スタイルが残り、社内研修やサポートだけでは仕組みとして定着しない状況が続いていました。
Grand Centralでは、導入前の綿密な打ち合わせと社員10名へのヒアリングを踏まえ、現場に合った営業プロセスの再設計を実施。Salesforceの運用見直しに加え、インサイドセールスの立ち上げや訪問同行でのフィードバックなど、日々の活動を支える仕組みづくりを進めました。
結果として、業務フローやツールの使い方が社内で揃い、営業活動の効率化とデータ蓄積のルーティン化が進みました。プロセスの見直しや日々の振る舞いが形として残るようになったことで、組織として改善を続けやすい環境が整っています。
Grand Centralは、経験豊富な営業コンサルタントが多数在籍しています。評価制度の構築や定着の支援はもちろん、戦略の立案、管理体制の構築など、少しでも営業課題を抱えている方はお気軽にお問い合わせください。
まとめ

営業評価制度の成功は、基準の明確化と運用のシンプルさによって達成できます。短期的な売上だけでなく、SFA/CRMで計測可能なプロセス指標を評価に組み込むことが不可欠です。
曖昧な評価評価は、人材の離職リスクを高めます。制度を整備できれば生産性の向上による売上の安定化も期待できるため、組織を成長させたいと考えているマネージャーの方は、ぜひ本記事を参考に、評価体制の構築を進めてみてください。