キーエンスの営業の仕組み|再現する3つの実践プロセスを徹底解説

キーエンスの営業組織は、個々の才能に頼らず、仕組みと文化によって高い成果を生み出す点で、多くの企業が参考にすべきモデルといえます。その根底には、徹底した行動量の管理、情報収集力の高さ、そして努力を正当に評価する制度設計があります。
本記事では、キーエンスの営業の強さを徹底解剖し、仕組みづくりで大切にしていることを解説します。
この記事を監修したコンサルタント
目次
キーエンスの営業の強さ

キーエンスの営業力を支えているのは、特別な才能ではなく、「行動」「情報」「評価」の3要素を高い水準で運用している点にあります。
ここでは、その仕組みについて以下の3つの観点から解説します。
- 他社を圧倒する行動量
- 顧客ニーズを徹底的に理解する情報収集力
- 営業成績以外の評価制度
他社を圧倒する行動量
キーエンスの営業力を支えているのは、精神論ではなく、数字で裏づけられた行動量です。売上目標から逆算して日次の活動目標を明確化し、全員がその達成状況を共有・管理する仕組みが整っています。これにより、担当者は「今日やるべきこと」が明確で、迷いなく行動に移せます。行動の積み重ねが自信となり、結果につながる好循環が生まれています。
同じ仕組みを自社でつくる場合は、まず「受注1件あたりに必要な行動数」を定義し、それを管理できる活動表を設計します。たとえば「毎日18時までに活動内容を入力する」「1日5件以上の訪問を必達とする」といったルールを設け、組織全体で行動を可視化していくことが、継続的な成果の第一歩です。
顧客ニーズを徹底的に理解する情報収集力
キーエンスの提案が顧客に刺さるのは、営業担当者のヒアリング能力の高さだけが要因ではありません。一つひとつの商談で「何を」「どこまで」聞くべきかを標準化し、組織的に顧客情報を収集・分析する仕組みを徹底しています。
つまり、キーエンスは目的のない営業を一切せず、外出前に上長と顧客ニーズや商談の目的・ゴールのすり合わせを行い、無駄のない商談をしています。このように顧客を理解する仕組みを設けることで、商談成功率を底上げしています。組織単位でこの活動を行なっているため、キーエンスは強い組織といわれています。
営業成績以外の評価制度
キーエンスは、個人の売上成績だけでなく、「仕組みの維持・強化にどれだけ貢献したか」という行動も評価に組み込むことで、強い組織を構築しています。
たとえばニーズや競合調査はもちろん、海外との連携や事例の共有などの情報収集に関する評価制度、売上向上施策や学習機会の提供など企画提供に関する評価制度などです。さまざまな貢献に対し、評価するルールを設けています。
このように成果以外も評価の対象とすることで、チーム全体がスキルアップできる体制を整えています。社内で取り入れる場合は、評価項目に「成果60%・行動30%・組織貢献10%」といった評価の比率を設定します。「後輩のロープレに積極的に付き合った」「成功した提案書をテンプレート化して共有した」といった行動をポイント化し、賞与や評価に反映させることで、担当者が自主的に行動するようになるでしょう。
キーエンスが営業の仕組み作りで大切にしていること

キーエンスの営業力を支えているのは、特別な仕組みではなく、組織としての基本を徹底して磨き続けている点にあります。
- 属人的ではない営業組織の構築
- 社員一人ひとりの自立性
- 最小の資本で最大の付加価値の提供
これらは一見すると当然のように見えますが、キーエンスは当たり前を誰よりも深く仕組みに落とし込み、全員が実行できる環境を整えています。
営業組織を強くするには、まずこの3点が自社でどこまで実践されているかを確認し、足りない部分を一つずつ見直すことから始めると良いでしょう。
属人的ではない営業組織の構築
キーエンスの営業体制は、個人の能力に依存せず、誰が担当しても成果を再現できる仕組みを前提に設計されています。
具体的には、トップセールスの商談プロセスや提案手法を細かく分解し、「どの段階で」「どんな情報を引き出し」「どう提案するか」を全員で共有しています。こうした行動設計をマニュアル化し、SFAなどのツールで成果データを可視化することで、経験値の少ない社員でも早期に成果を出せるようにしています。
属人的な営業は、担当者の退職や異動によって一気に崩壊します。キーエンスはそのリスクを排除し、経験ではなく仕組みで成果を生む体制を確立している点が特徴です。
社員一人ひとりの自立性
キーエンスは前述したように管理体制やルールは厳しい傾向にありますが、担当者一人ひとりが自身の考えで目標に向かってアクションすることを大切にしています。
たとえば、毎朝のミーティングでKPI未達を報告する際、担当者は「なぜ達成できなかったのか」「次に何を改善するのか」をデータをもとに説明します。上司の指示を待つのではなく、自分で課題を分析し、解決策を提示する流れが定着しています。
キーエンスの社員は行動やマインドが経営者に近い立場にあり、売上に対して貪欲さと行動力が生まれるため、これが強さの根幹的な部分ともいえます。
最小の資本と人で最大の付加価値の提供
キーエンスの強さは、経営理念である「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる。」を、現場レベルで体現している点にあります。
営業組織にとって最小の資本とは、いうまでもなく、営業担当者の有限な時間です。この貴重なリソースを、「いかに無駄なく、受注確度の高い活動に集中させるか」というマインドセットが、組織全体の生産性を最大化し、高い利益率を実現するためのポイントとなります。
そのためにキーエンスは、社会が欲しているものを細かく分析し、それ以上の価値提供を実現するための制度を設けています。たとえば、ニーズカードという訪問中に発見した現場のニーズを開発部門にフィードバックできる制度や、お客様紹介制度という担当外の商品のニーズを発掘した際に担当営業に情報連携できる仕組みなどです。
キーエンスは、顧客を大切にし、営業活動の無駄を省くことで、最小の資本で最大の価値を作ることに成功しています。
キーエンス流・営業ノウハウ

キーエンスの営業ノウハウについて、以下の3つのポイントで解説します。
- 顧客課題を可視化するリサーチ手法
- 価格競合を回避する高付加価値の提案
- 成果を最大化する高速PDCAと即時フィードバック体制
記事の最後では、会社でどのように活用することができるのかについてまとめているのでぜひご活用ください。
顧客課題を可視化するリサーチ手法
キーエンスの営業担当者は、訪問前に顧客の潜在的な課題について徹底的に仮説を立て、商談を「その仮説の答え合わせの場」として、活用するリサーチ手法を徹底しています。電話でのヒアリングの段階で、すでにニーズや顧客課題が可視化され、提案できるレベルまで落とし込んでいます。
事前に業界動向や過去の類似事例から「この企業は、おそらく〇〇で生産性をロスしているはずだ」といった具体的な仮説を立てるイメージです。質問の質が格段に上がり、顧客をより深い課題認識へと導くことができます。
このリサーチ手法を仕組み化したものが、キーエンスの外出前の事前報告書です。担当者は訪問前に、商談の目的だけでなく「顧客が抱えるであろう課題の仮説」や「想定される反論への切り返し」までを言語化し、上長に報告します。
まずは商談の前に、数分間は「この顧客が自社の製品を導入してくれる最大の理由は何か?」「本質的な課題は何か」という仮説を各自で立て、共有する場を設けてみましょう。このような小さな習慣がキーエンスのような営業組織を作る第一歩となります。
価格競合を回避する高付加価値の提案
キーエンスの提案は、その製品を導入することで、顧客のビジネスが具体的にどのような利点があるのかという経済合理性を、誰が見てもわかる数字で示すことを徹底しています。
製品の機能や性能の比較は、最終的に「それで商品はいくらなの?」という価格競争に陥ります。しかし、キーエンスのように「この設備投資によって、年間〇〇万円の人件費が削減でき、わずか〇ヶ月で投資回収が可能です」といった経済的メリットを明確に提示できれば、顧客の判断基準は、価格から投資対効果へと変わります。これが、高い利益率を維持しながら販売できる本質的な理由です。
価格以外のポイントにフォーカスすることで、競合商品と比較されない提案が可能です。くわえて、投資回収期間のシュミレーションも提案すると、顧客の中で納得感が生まれ商談がスムーズに進みます。
貴社の主力製品について、顧客のコスト削減額や生産性向上による利益増を試算できるシンプルなシミュレーションシートをExcel等で作成し、チームで共有する習慣をつけましょう。これを商談の武器とすることで、価格以外の価値で勝負する営業スタイルへと転換できます。
成果を最大化する高速PDCAと即時フィードバック体制
キーエンスは、一度の成功や失敗体験を個人の経験で終わらせない体制を整えています。日々のすべての営業活動から学びを抽出し、高速でPDCAサイクルを組織全体で回す仕組みを徹底しています。
たとえば、終業後の上長やマネージャーを交えて振り返る、商談の事後報告に対する30分以内にフィードバックするといったルールです。商談直後の記憶が鮮明なうちに上司から的確なフィードバックを受ければ、改善点は深く記憶に刻まれます。
個人の経験を組織の資産に変え、チーム全体の学習スピードを最大化しなければ、市場の変化に対応できなくなります。日々の活動を詳細に記録し、成功・失敗要因を即座に共有・分析することで、組織全体の課題解決能力が向上します。
まずは、チームのグループチャットで、今日1日で得た最大の学びや気づきを終業時に共有するルールからはじめてみましょう。こうした小さな情報共有の習慣が、個々の経験を組織の共有財産に変え、チームを学習して変化する組織へと進化させる第一歩となります。
キーエンス流営業を再現するための実践プロセス

キーエンスのような営業組織を再現するためには、理念や意識改革ではなく、再現可能なプロセスを実行・検証し続ける仕組みを作ることが重要です。具体的には、次の3つのステップを段階的に整備していく必要があります。
- データと現場観察で営業プロセスを標準化する
- 標準化プロセスを高速で実行・検証する
- 改善サイクルを即時フィードバックで回す
1.データと現場観察で営業プロセスを標準化する
再現性の高い仕組みづくりの第一歩は、チーム内のトップセールスの行動をデータと現場観察で徹底的に分析し、勝ちパターンを新人や若手が実践可能な標準プロセスに落とし込むところからはじめます。
まずはSFAに蓄積されたデータから、チームの平均受注率とトップセールスの受注率を比較しましょう。次に、その差が生まれる要因を探るため、トップセールスの営業に同行し、初回訪問でかならず聞いている質問、顧客タイプ別の提案書の使い分けなど、具体的に成功要因を分析します。
その行動を初回訪問チェックリストや、提案書テンプレートとして言語化・標準化し、ほかの担当者もトップセールスと同様の営業が実現できるところまで落とし込みます。
ゼロからキーエンスのようなプロセスを真似ようとすると、現実離れしたものになったり、現場からの不満が蓄積したりと、さまざまなリスクがあります。まずは、社内の成功事例やトップセールスのノウハウ・マインドを、誰もが理解し真似できるマニュアルへと変換することが、現実的で効果的な方法です。
2.標準化プロセスを高速で実行・検証する
設計した標準プロセスは、日々の営業活動の中で全員が例外なく実行し、その結果どうなったかを高速で検証していく必要があります。
たとえば、前述で解説した初回訪問チェックリストを全営業担当者に日々の活動報告での入力を義務付けます。上長やマネージャーは週単位で入力内容を確認し、チェックリストの遵守率と有効商談化率の相関関係を分析します。データに因果関係があり、明らかに有効商談率が向上している場合、標準化したプロセスはうまくいっていると判断できるでしょう。
いきなり全社で導入するのが難しい場合は、意欲の高い一部のチームを「パイロットチーム」として選定し、1ヶ月間だけ標準プロセスを徹底して実行してもらいましょう。そこで小さな成功事例を作り、その効果を数値で示すことが、全社展開への強力な推進力となります。
3.改善サイクルを即時フィードバックで回す
標準化した営業プロセスは、一度作って終わりではなく、現場の声をもとに常に更新する仕組みが必要です。
たとえば、「標準プロセスを試したところ、ある業界では反応が良かったが、別の業界では切り返しが響かなかった」といった現場の気づきを、すぐに共有・検証できる体制を整えます。改善を重ね、顧客の反応が向上していけば、組織が確実に進化している証です。
週次ミーティングの議題に「今週の改善提案」を数分でも設け、現場メンバーが意見を出せる時間を確保しましょう。ルールの実行者ではなく、仕組みの更新に関わる当事者として関わってもらうことが、環境変化に強い営業組織を育てるポイントです。
営業組織の構築が難しい場合は「コンサル活用」も選択肢の一つ

これまで解説してきたノウハウは、再現性の高い強い組織を作るうえで欠かせない要素です。
しかし、これらの改革を社内のリソースやノウハウだけで実行し、組織文化として根付かせることは難しく、多くの企業がプロジェクトを頓挫させています。仮に成功までの道筋を描き、自信があったとしても、形になるまでに膨大な時間とリソースがかかり、費用対効果が合わない場合もあります。そのような課題を避けるために、外部の営業コンサルタントを活用する選択肢があります。
GrandCentralでは、キーエンス出身のコンサルタントも在籍し、これまで大企業からスタートアップまで多くの企業を支援してきた実績があります。顧客満足度、プロジェクト継続率ともに95%を超えており、現状のボトルネックを特定する客観的な分析力、科学的なプロセス設計、最適なデジタルツールの選定など、課題に合わせた支援が可能です。
また、他社での成功事例という豊富な知見と、第三者だからこそ可能な客観的な立場から、課題を突破するための伴走型パートナーとして支援します。
「何から手をつけるべきか議論が進まない」「仕組み作りに必要な知見や時間が不足している」「現場の抵抗が強く、改革が前に進まない」といった課題をひとつでも抱えている営業責任者の方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
営業コンサルティングとは? サービス内容と得られる効果を解説
下記の章ではGrandCentralの成功事例も解説しています。ぜひキーエンスのような営業組織の体制作りにご活用ください。
キーエンス出身のプロが手がけるGrandCentralの営業成功事例
GrandCentralは、キーエンス出身者をはじめとする営業コンサルタントがさまざまな支援を提供しています。本章では、属人化の脱却や営業戦略の設計といった、GrandCentralによる支援事例を解説します。
株式会社イビコン様

株式会社イビコン様は、これまで属人的であった営業組織から脱却し、Salesforceを活用したTHE MODEL型の構築に成功しています。
新しい営業モデルへと変革する以前は、Salesforceをうまく活用できない点に課題を抱えていました。社内研修やSalesforce担当者のサポートを実行してみても結果がでず、そのようなときにGrandCentralを見つけご依頼いただいたのがきっかけです。
Grand Centralが支援に入ってから、インサイドセールスとフィールドセールスの分業化や、Salesforceの活用方法などのサポート、立ち上げ初期メンバーの育成などを担当。営業活動の効率化とデータ蓄積のルーティーン化に成功し、属人的な営業を脱却しています。
属人営業からの脱却。 Salesforce×THE MODELで実現した営業組織の仕組み化。
日揮グローバル株式会社様

日揮グローバル株式会社様は、新商品(CoreSafety®)の営業を新たにスタートすることとなり、営業方法や売り方を模索している状態でした。しかし未経験の領域であるために、社内で進めていくには時間がかかることから、GrandCentralを支援先に選んでいただきました。
GrandCentralが支援に入ってからは、伴走型パートナーとして営業戦略の立案からサポート。定例MTGや商品説明会の動向も行い、包括的なサポートを提供しました。結果として、日揮グローバル株式会社様は質の高いアポイントを獲得できるようになり、新規事業の拡販に成功しています。
Grand Centralができること
GrandCentralでは、営業戦略の構築から研修、ツールの導入など包括的なサポートを実施しています。これまで累計350社の支援を行い、顧客満足度、プロジェクト継続率95%と高い満足度を実現しています。
そこで本章では、GrandCentralが提供しているサービスや特徴をまとめました。キーエンスのようにチーム全体で成果を上げ、安定した売上を作れる組織を作るためのサービスを提供しています。
Grand Centralが提供するセールスイネーブルメントとは
Grand Centralが提供するセールスイネーブルメントは、組織全体で安定した成果を創出できるように、コンサルタントが組織開発のコンサルティングや研修、営業力の可視化を支援するサービスです。
具体的には、「営業スキルが属人化している」「営業プロセスを標準化できていない」「新人教育がうまくいっていない」などの課題を解決します。提供するサービスは一般的なものではなく、お客様の課題に合わせた完全オーダーメイドのカリキュラムです。
キーエンスやオープンハウス出身の営業コンサルタントが、課題を明確にし、再現性の高い営業組織構築のお手伝いをします。
Grand Centralならではの3つの特徴
Grand Centralの特徴は、戦略の立案からコーチング研修、データやスキルの可視化まで包括的なサポートを実施している点です。
- 戦略設計から伴走するコンサルティング
- 平均値を底上げするコーチング研修
- 客観的に可視化するアセスメント
売れる組織構築で必要不可欠な戦略設計から実行の段階まで伴走し、属人化しない再現性の高い営業組織へと変革のお手伝いをしています。
人材研修の支援では、Grand Centralのコンサルタントが講師となり、会社の課題に合わせたオーダーメイドのカリキュラムを提供。ただ教えるのではなく、自身で気づき、マインドとスキルをアップデートできるようなコーチングを重視しています。
正しく強い営業組織を作るには、客観的な判断が重要です。Grand Centralのコンサルタントは第三者の視点で分析し、課題やタスクを整理することで、会社に合った営業マンを育成することを強みとしています。
まとめ

キーエンスのような再現性の高い組織を作るために大切なのは、目標からが逆算された行動量の徹底や情報収集、そして社員のモチベーションを向上させる評価制度です。
それらを自社の営業プロセスに落とし込み、検証と改善を繰り返すことで、トップセールスに依存しない営業組織を構築できます。新人の即戦力化が期待でき、新商品の開発や新規市場の拡大など、事業の幅が広がるでしょう。
まずはトップセールスの行動や思考を分析して、標準となる社内の営業プロセスを構築してみましょう。GrandCentralではキーエンス出身者による営業コンサルティング支援を提供しています。
「新商品を売り込みたいけど何から手をつけていいかわからない」「他社よりも早く市場を開拓したい」といったお悩みを持つ経営者の方、マネージャーの方はお気軽にご相談ください。
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