営業プロセス標準化の進め方|成果を出すための5つの手順

「特定の営業担当者のスキルに売上が左右される」「新人の育成に時間がかかりすぎる」といった課題に悩んでいませんか。提案資料の作り方やヒアリングの深さ、商談の進め方などが人によって異なると、新人が育ちづらく、受注の見通しも安定しにくくなります。
こうした課題を解消する手立てとして注目されているのが、営業プロセスの標準化です。属人化を減らし、誰が担当しても一定の品質で商談を進められるようになることで、組織全体の成果を底上げできます。
本記事では、標準化がもたらす具体的なメリットから、明日から実践できる5つのステップと成功のポイントまで解説します。営業を分析し、強い組織へと変革するための第一歩を踏み出しましょう。
この記事を監修したコンサルタント
目次
営業プロセス標準化の目的

営業プロセス標準化の目的は、営業を個々の感覚に頼る状態から抜け出し、組織として同じ基準で成果を積み上げられるようにすることです。
優秀な個人に依存した営業スタイルは、大きなリスクになります。労働人口が減り、採用も育成も以前より難しくなる中では、以下の問題が顕在化しやすくなります。
- 一部の担当者の退職で売上が大きく揺らぐ
- 新人が成果を出すまでに時間がかかる
- 組織として「何が良かったのか」が共有されない
営業プロセスを標準化する目的は、こうした属人化リスクを減らし、誰が担当しても一定の再現性で成果を出せる状態をつくることにあります。
標準化されれば、商談の進め方・判断基準・必要なデータがチームで揃うため、改善ポイントが共有されやすくなり、組織として継続的に成長する土台が整います。
営業プロセス標準化による主なメリット

ここでは、営業プロセスを標準化することで企業が得られる主なメリットを6つ解説します。
- 課題を可視化して改善アクションにつなげられる
- 再現性の高い仕組みで生産性を高められる
- 属人化を防ぎ成果を安定化できる
- 新人育成を効率化し早期戦力化につなげられる
- チーム全体の営業力を底上げできる
- データを活用し戦略的な判断ができる
課題を可視化して改善アクションにつなげられる
営業プロセスを標準化すると、商談がどの工程で止まりやすいのかがはっきり見えるようになります。全員が同じプロセスで商談を進めることで、フェーズごとの移行率や滞留ポイントを比較でき、改善の優先順位がつけやすくなります。
たとえば、これまで「予算が合わなかった」とまとめられていた失注でも、「見積提示前の比較検討で止まっていたのか」「初回提案の“理解”でつまずいていたのか」と、どのフェーズで止まったのかを具体的に把握できます。
フェーズが曖昧なままだと「頑張る」「説明を強化する」といった抽象的な改善に留まりますが、工程が明確になれば、どこを直せば商談が進むのかが特定できるため、次の打ち手が決めやすくなります。
再現性の高い仕組みで生産性を高められる
標準化のもう一つの大きな利点は、トップセールスの行動を仕組みとして再現できるようになることです。属人的な成功体験を形式化し、チーム全体で共有できれば、誰が担当しても一定の成果が出せる状態に近づきます。
これは、単に「マニュアルを作る」という話ではありません。商談の進め方や判断の基準がそろうことで、以下のような変化が積み上がり生産性が高まります。
- 次に何をすべきか迷う時間が減る
- 商談ごとの質のばらつきが小さくなる
- 顧客との対話など成果につながる業務に集中できる
再現性が高まるほど、個人の能力差に引っ張られずに成果を積み上げられるため、組織としての成長スピードも上がります。
なお、営業活動における再現性の重要性や、再現性を高める具体的な方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
属人化を防ぎ成果を安定化できる
属人化を防ぎ、成果を安定して出せるようにすることは、標準化に取り組む最大の目的です。以下のように、「担当者ごとのやり方に依存した組織」と「プロセスがそろっている組織」では、商談の進み方や成果のばらつきに大きな差が生まれます。
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比較項目 |
属人化した組織 |
標準化された組織 |
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営業ノウハウ |
個人の経験や勘 |
チーム共有の資産 |
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退職時のリスク |
売上・顧客情報が失われる |
ノウハウが残り、引継ぎが円滑 |
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成果の安定性 |
担当者によって大きく変動 |
組織全体で安定した成果を創出 |
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顧客体験 |
担当者次第で品質にバラつき |
誰が担当でも一貫した高品質な対応 |
営業活動を可視化することは、個人の退職が経営に与える影響を最小限に抑えるリスク管理にもつながります。
営業の属人化が引き起こす具体的なリスクや、その解消方法についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
新人育成を効率化し早期戦力化につなげる
営業プロセスが標準化されていると、新人が最初につまずきやすい「どこまで準備すればよいか」「商談の流れをどう組むか」「どの場面で何を確認すべきか」が明確になります。
教える側の経験や勘に頼らずに、新人が自分のペースで理解を深めやすくなるため、現場に出るまでの不安が減ります。
また、教える側は「まずはここを押さえてほしい」という基準が揃うことで、指導にぶれなくなり、関わる人によって習得度が変わる問題も起きにくくなります。結果として、新人が商談に自信を持って臨めるタイミングが早まり、早期の戦力化につながります。
チーム全体の営業力を底上げできる
チーム全体の営業力を底上げできる点もメリットのひとつです。1人のトップセールスに頼る組織ではなく、チーム全員が一定水準以上のパフォーマンスを発揮する「平均点が高い集団」を構築します。
成功事例だけでなく、失敗事例も含めた情報も組織に蓄積され、チーム全体でノウハウを共有し、改善し続ける体制が整います。
データを活用し戦略的な判断ができる
営業プロセスを標準化すると、商談の記録方法や把握すべき指標がそろうため、ツールに蓄積されるデータの精度が上がります。こうした状態が整って初めて、SFA(営業支援ツール)やCRM(顧客管理システム)のデータが現場の動きと一貫して読み解けるようになります。
例えば、以下の実態を数字でつかめるようになります。
- 失注が特定の工程に集中していないか
- 反応率の高い業種・規模がどこか
- 成果につながる行動パターンが何か
結果として、「どこに注力するか」「どのプロセスを見直すべきか」といった戦略判断を感覚ではなく事実を根拠に行えるようになります。
成果を安定させる営業プロセス標準化の手順

ここでは、成果を安定させる営業プロセス標準化の具体的な手順を5つのステップで解説します。
- 現状の営業プロセスを見える化する
- 成果につながる行動を抽出し標準化する
- 現場で実践しやすいマニュアルを整備する
- SFA/CRMツールで全社に定着させる
- データを分析し継続的に改善する
1.現状の営業プロセスを見える化する
標準化の最初のステップは、現場で実際にどのように商談が進んでいるのかを、事実ベースでつかむことです。
担当者へのヒアリングや商談同行を行うと、同じ商談でも「どこで何を話すか」「どんな判断で次のステップに進めているか」といった進め方の違いが見えてきます。また、日報やツールのログを確認すると、初回接点から提案、フォローまでの流れが担当者ごとにどう組み立てられているかが分かります。
こうした現状を正しくつかむことで、どこを基準化すべきか、どこが属人化しているかが明確になり、次のステップの議論が進めやすくなります。
2.成果につながる行動を抽出し標準化する
次に、成果につながる行動を抽出し標準化します。見える化したプロセスの中から、高い成果を上げている担当者の行動(勝ちパターン)を特定しましょう。
例えば、以下のように成果を生みやすい動きが見えてきます。
- 初回面談で必ず決裁者の課題感まで確認している
- 提案前に競合状況を把握している
- 商談の合間にフォローを欠かさない
こうして抽出した要素をもとに、誰が担当しても同じ基準で進められる営業プロセスへと再設計します。
3.現場で実践しやすいマニュアルを整備する
続いて、現場で実践しやすいマニュアルを整備します。単なる操作説明書ではなく、具体的な行動指針を示すマニュアルを作成しましょう。
- 各プロセスでの具体的なアクション
- 判断基準やトークスクリプト
- 各種テンプレート(メール文面、提案書など)
誰が見ても理解でき、すぐに行動に移せる手引書を目指します。
4.SFA/CRMツールで全社に定着させる
次に、SFA/CRMツールで全社に定着させます。設計したプロセスをツールに反映させ、実行を促す仕組みを構築しましょう。
ここでのポイントは、現場の負担を最小限に抑える設計です。分析に必要なデータは確実に取得しつつ入力項目は可能な限り絞り込み、現場の負担を減らします。
5.データを分析し継続的に改善する
最後は、データを分析し継続的に改善します。標準化は一度作って終わりではありません。ツールに蓄積されたデータを定期的に分析し、プロセスを常に見直しましょう。改善すべき工程を特定するために、移行率や滞留日数、アクション実施率といった複数のデータを定期的に確認していくことが重要です。
たとえば、手順はそろっていても特定の商材だけ比較段階で滞留が長い場合、資料の流れや説明の順番が商材特性に合っていない可能性があります。こうした運用で見える差を反映し、標準化の精度を継続的に整えていきます。
営業現場に浸透する標準化を実現するためのポイント

ここでは、営業現場に浸透する標準化を実現するためのポイントを3つ解説します。
- 現場の声を反映し運用できる仕組みにする
- ルールは目的に合わせて柔軟にアップデートする
- 成果共有を促す評価・ナレッジ制度を整える
現場の声を反映し運用できる仕組みにする
運用できる仕組みにするには、現場の声を反映させることが不可欠です。現場の実態に合わないプロセスは「やらされ仕事」になり、形だけとなって使われなくなります。
そのため、プロジェクトの初期から現場のハイパフォーマーを巻き込み、彼らの優れたやり方を誰でもわかる手順にまとめる形で進めます。現場の納得感と当事者意識を高めることが、実際に使われる仕組みを作るためのポイントです。
ルールは目的に合わせて柔軟にアップデートする
標準化したプロセスは、それを設計した目的を果たしているかどうかで評価します。プロセスを守ること自体が目的化すると、形は整っていても成果につながらない運用になりがちです。
たとえば「提案前に必ず課題を深掘りする」というルールを置いたのであれば、実際に商談の質が上がっているか、移行率が改善しているかといった目的との整合を確認します。もし効果が出ていないのであれば、手順の内容や順番を見直し、当初の目的を達成できる形に調整する必要があります。
大切なのは、ルールを固定化するのではなく、「なぜこのプロセスを置いているのか」という目的に立ち返りながら、成果に合う形へ更新し続ける姿勢です。
成果共有を促す評価・ナレッジ制度を整える
標準化を形だけで終わらせないためには、成果や学びを共有しやすい制度設計が欠かせません。取り組みを実践した人が正当に評価される仕組みがあると、成功事例が自然と共有され、組織全体で使える知見に変わっていきます。
また、学びを共有する場や記録の方法を整えておくことで、担当者ごとの経験が埋もれず、必要なときに参照しやすくなります。評価とナレッジ共有の仕組みがそろうことで、標準化したプロセスが日々の営業活動に結びつきやすくなります。
営業プロセス標準化の実践事例

ここでは、営業プロセスの標準化を実現した企業様の事例を2つ紹介します。
- 株式会社イビコン様|製造業における「THE MODEL」型への転換
- 株式会社ミライク様|サービス業におけるデータ活用基盤の整備
なお、他のご支援実績については、こちらからご覧ください。
株式会社イビコン様|Salesforce×THE MODELで営業プロセスを再設計

株式会社イビコン様は、属人化されたやり方から抜け出せず、導入済みのSalesforceも有効に活用できていない状態でした。
Grand Centralにご依頼いただき、分業体制(THE MODEL型)の構築を支援。営業プロセスに合わせてSalesforceを再設計し、マニュアルや管理体制もあわせて整備することで、組織的な営業活動の土台を築きました。
結果として属人営業から脱却し、営業活動の効率化とデータ蓄積のルーティン化を実現しています。
株式会社ミライク様|Salesforce導入でデータ活用基盤を整備

株式会社ミライク様は、営業情報がWordで管理されており、組織としての一元管理ができていませんでした。また、Salesforceの活用方法などのノウハウが不足していた点も課題でした。
Grand Centralは、Salesforce導入を通じて顧客情報や案件進捗を可視化し、進捗や数字を全社で共有できる仕組みを構築。これにより、情報共有とデータ分析の土台を整える支援をおこなっています。
結果として、データに基づき営業活動を分析・改善する体制を確立しています。
Grand Centralができること
ここでは、Grand Centralが提供するサービスについて解説します。
- Grand Centralが提供するセールスコンサルティングとは
- Grand Centralならではの3つの特徴
Grand Centralが提供するセールスイネーブルメントとは
私たちが提供するセールスイネーブルメントは、単発の研修ではありません。営業組織が継続的に成果を出すための「仕組みづくり」です。
具体的には、まず貴社の課題をヒアリングし、営業力強化の戦略を立案し、ロープレを組み込んだ実践的な研修カリキュラムを作成して実施します。最後は実施結果を分析・評価し、組織にノウハウが定着するまで伴走します。
Grand Centralならではの3つの特徴
Grand Centralには、他社にはない3つの特徴があります。
1.戦略設計から実行までを一気通貫で支援
営業戦略の設計から、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといった実務までをワンストップで支援します。SFAの構築や営業研修など、お客様が自走するための幅広いメニューを提供可能です。
2.データと実績に基づく実践的なノウハウ
キーエンスやリクルートなどでトップレベルの実績を残した専門家が、350社以上の支援実績で培った、実践的で生きたノウハウを提供します。商談同席などを通じて、お客様自身も気づいていない潜在的な課題を発見し、最適な解決策を提示します。
3.質の高い専門家によるチーム
営業戦略の立案や仮説検証は、トップレベルの営業を経験してきたコンサルタントが担当します。実働部隊も、独自の厳しい基準で選抜された実力のあるメンバーで構成されています。
まとめ

営業プロセスの標準化は、単なる業務効率化ではなく、企業の持続的な成長を支えるための重要な経営判断です。標準化によって、以下の実現を目指せます。
- 個人のスキルに依存する「属人化」のリスクをなくす
- データに基づき、組織全体の判断力を高める
- お客様に常に質の高いサービスを提供する
もし自社だけでの標準化に課題を感じていたり、より専門的な知見を求めていたりするなら、ぜひ一度私たちGrand Centralにご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な解決策をご提案します。具体的な支援内容については、以下のサービス資料3点セットをぜひご覧ください。