営業組織改革の進め方|失敗しない5つの手順と成功事例を紹介

BtoB企業の中には、「組織が大きくなるにつれて売上が伸び悩んでいる」「特定のエース社員に依存してしまっている」といった営業組織の課題を抱えていることもあるでしょう。その要因として、組織としての戦略と現場の実行体制にずれが生じているケースが少なくありません。
この記事では、営業組織の改革が求められる背景から失敗しないための具体的な5つのステップ、実際に改革に成功した企業の事例を詳しく紹介します。データと仕組みに基づいた再現性のある営業で持続的な成果を出すための指針としてご活用ください。
この記事を監修したコンサルタント
目次
営業組織の改革が求められる理由

現代のビジネス環境において、営業組織の改革は企業の持続的な成長を左右する重要な課題です。
単なる売上目標の管理だけでは不十分な背景には、大きく2つの環境の変化が関係しています。
- 顧客の購買行動の変化
- 人材流動化による属人化リスク
顧客の購買行動の変化
デジタル化により、情報の非対称性が解消されつつあり、これまで製品情報を独占していた営業担当者の役割は大きく変化しています。
米国の調査会社CEB(現Gartner)のデータによると、購買プロセスにおいて次のような傾向が示されています。
- 営業と会う前にプロセスの57%が完了
- 顧客は事前に一定の意思決定を済ませている
【購買プロセスの傾向】
| 営業と会う前に進む購買プロセス 57% |
営業接点以降で担うプロセス 43% |
上記のように、顧客は営業担当者に会う前から情報を集め、ある程度の検討を済ませています。そのため、問い合わせや商談を待つだけでは、検討の初期段階で接点を持てず、比較対象から外れる可能性があります。
顧客に選ばれるためには、検討が始まった段階で接点を持ち、比較や判断に使われる情報を早い段階で届ける必要があります。インサイドセールスなどを活用し、面談前の段階から顧客の購買プロセスに寄り添うアプローチが不可欠です。
人材流動化による属人化リスク
人材の流動化が進み、特定のエース社員に依存した組織運営の難易度が上がっています。終身雇用が当たり前ではない現在、時間をかけて個人の経験則を伝えるような従来の育成スタイルだけでは、人が入れ替わるたびに成果が不安定になるリスクがあります。
人が入れ替わっても一定の成果を出せる仕組みがなければ、経営は安定しません。データと論理に基づいた組織で売る営業への変革が、現在のBtoB企業に求められます。
なお、個人のスキルに依存するリスクや解消方法については、以下の記事より詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
失敗しない営業組織改革の進め方5ステップ

改革といっても、いきなりツールを導入したり、組織図を書き換えたりするのは得策ではありません。ここでは、着実に成果へつなげるための5つのステップを紹介します。
- 数字と現場の声から「課題の本質」を見つける
- 目指すゴールとそこに至る「数値目標」を決める
- 売れるビジネスパーソンの「勝ちパターン」をマニュアル化する
- 「誰がやるべきか」という視点で業務を切り分ける
- ツールで活動を見える化し評価制度を整える
数字と現場の声から「課題の本質」を見つける
まずは現状を正しく把握することから始めます。「営業力が落ちている気がする」といった感覚ではなく、客観的な事実に基づいて課題を特定します。
商談数、受注率、リードタイムなどの定量データを分析すると同時に、現場メンバーへヒアリングを実施し、「どこでつまづいているのか」「何が負担になっているのか」という生の声を集めましょう。
ここで重要なのは、「課題の真因特定(定性分析)」と「数値目標の管理(定量分析)」を混同しないことです。現状分析では、以下の表のようにロジックツリーを用いて、課題の原因を掘り下げていくのが有効です。
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項目 |
ロジックツリー |
KPIツリー |
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目的 |
課題の真因特定 (定性分析) |
数値目標の管理 (定量分析) |
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手法 |
「なぜ?」を繰り返して原因を掘り下げる |
計算式(掛け算・割り算)で要素を分解する |
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活用例 |
「なぜ売上が上がらないのか?」 →市場環境の変化か? →営業力の低下か? |
「売上 = 商談数 × 受注率 × 単価」 →どの数値が足りないかを特定する |
現状分析ではロジックツリーで課題の原因を明らかにし、次の目標設定の段階ではKPIツリーを用いて数値を管理するという使い分けが効果的です。
目指すゴールとそこに至る「数値目標」を決める
課題の本質が明らかになった後は、来期売上1億円といったKGI(重要目標達成指標)を設定しましょう。
KGIを達成するためのプロセスを「KPIツリー」を用いて因数分解します。例えば、以下の表のように計算式でブレイクダウンしていきます。
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KGI (売上) →来期売上1億円 |
KPI 1 (受注数) |
KPI 1-1 (リード数) →不足していないか? KPI 1-2 (商談化率) →ここが悪いのか? KPI 1-3 (受注率) →決めきれているか? |
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KPI 2 (平均単価) |
KPI 2-1 (商品単価) →上位プラン提案できてるか? KPI 2-2 (買上点数) →クロスセルできてるか? KPI 2-3(値引率) →安売りしていないか? |
このように数式でつながった目標を設定することで、未達の際に「リード数が足りないのか」「安易な値引きで単価が下がっているのか」といったボトルネックを特定できます。これにより、論理的で具体的な改善アクションが可能になります。
売れるビジネスパーソンの「勝ちパターン」をマニュアル化する
営業成果が特定の担当者に偏る背景には、トップセールスが実際に行っている判断や動きが、他のメンバーに共有されていない点があります。たとえば、「どの段階でどのように課題を掘り下げているのか」「どのタイミングで提案やクロージングに進んでいるのか」といったポイントは、本人の経験に依存したままになりがちです。
こうした商談の進め方を言語化し、ヒアリングの順番や提案に入る判断ポイントをマニュアルやトークスクリプトとして明文化することで、準備段階で「何を聞くか」「どこまで踏み込むか」に迷うことがなくなります。結果として、聞くべき内容が抜け落ちたり、提案に入るタイミングが遅れたりすることが減り、商談全体の進行スピードが安定します。
「誰がやるべきか」という視点で業務を切り分ける
すべてのプロセスを一人の営業担当者が担う一気通貫型の体制は、対応範囲が広がりすぎることで、対応の遅れや品質のばらつきを招きやすくなります。アポイント獲得、商談、アフターフォローを同時に抱える状態では、どの工程も中途半端になりやすく、結果として受注機会を取りこぼす原因にもなり得ます。
そこで、営業プロセスを役割ごとに分け、以下のように担当を明確にしましょう。
- インサイドセールス(アポイント獲得)
- フィールドセールス(商談)
- カスタマーサクセス(アフターフォロー)
それぞれの担当者が専門領域のスペシャリストになることで、商談などのコア業務に集中できるようになります。その結果、各工程の対応品質とスピードが揃った営業プロセスを、組織として継続的に回せるようになります。
ツールで活動を見える化し評価制度を整える
新しいプロセスを定着させるためには、ITツールの活用が欠かせません。SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)を導入し、個人の活動履歴や顧客情報を組織の資産として蓄積・可視化できる環境を整えます。
また、ツール導入とセットで評価制度を見直すことも重要です。結果(売上)だけでなく、ツールへの入力や新プロセスの遵守といった行動そのものを評価対象に加えることで、現場の実行力は高まります。
これは、徹底した行動管理をおこなうキーエンス流の営業においても重視されているポイントです。徹底した仕組み作りやデータ活用については、以下の記事もご参考ください。
営業組織の改革を成功させるためのポイント

営業改革を単発の施策で終わらせず、継続的な運用につなげるためには、押さえるべきポイントが3つあります。
- まずは個人の感覚ではなく共通のルールを作る
- 改革の目的を現場と共有し置き去りにしない
- 改革直後は一時的に成果が落ちることを想定して進める
まずは個人の感覚ではなく共通のルールを作る
改革の初期段階では、個人の裁量よりも組織のルールを徹底することが重要です。たとえば、「見込みあり」という認識が担当者ごとに異なる状態では、SFAにデータが蓄積されても正しい比較や分析ができず、改善のPDCAを回せません。
まずは「見込み顧客として進める段階」や「商談フェーズの完了条件」などの基準を統一し、全員が同じ物差しで判断できる共通言語を作ることが重要です。
改革の目的を現場と共有し置き去りにしない
営業改革をトップダウンで進めると、現場では「入力が増えるだけではないか」「行動を監視されるのではないか」と受け取られてしまいかねません。最初に共有すべきなのは、改革の目的が管理の強化ではなく、「現場を助ける支援(Enablement)」であることです。
具体的には、以下のように現場にとって何が減り、何が楽になるのかを具体的に伝えることが有効です。
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項目 |
現場が抱きがちな誤解(NG) |
本来伝えるべきメッセージ(OK) |
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目的 |
「サボらないよう管理するため」 |
「もっと楽に売れるように支援するため」 |
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影響 |
「入力作業などの手間が増える」 |
「資料探しなどの無駄な作業が減る」 |
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姿勢 |
「今までのやり方は間違っている」 |
「今までのやり方をさらに良くする」 |
このように「変わることで自分たちにどのような得があるのか」を丁寧に説明し、現場が納得して動ける状態を作ることが大切です。
改革直後は一時的に成果が落ちることを想定して進める
新しいやり方に移行する際、一時的に生産性が落ちる現象(Jカーブ効果)は避けられません。SFA入力の追加や新しい手順への対応に時間が取られると、現場からは「前のやり方の方が早かった」「余計なことが増えた」という声が出やすくなります。
そのため、改革の初期は成果指標だけで是非を判断せず、「入力がどこまで定着しているか」「商談情報が共有され始めているか」「提案準備のやり直しが減っているか」といった運用指標を同時に確認しながら進める必要があります。
こうした運用が回り始めていれば、成果が一時的に落ちていても、改革は少なくとも想定したプロセス上にあると考えられます。
営業組織の改革の事例

ここでは、組織改革に取り組み、実際に成果を上げた弊社の支援事例を紹介します。
- 株式会社イビコン様|Salesforce×THE MODELによる営業組織の仕組み化
- シリウスビジョン株式会社様|ベテラン頼りの属人化組織からの脱却
- 株式会社ヤマヒロ様|アナログ管理からの脱却と営業活動の可視化
株式会社イビコン様|Salesforce×THE MODELによる営業組織の仕組み化

株式会社イビコン様では、営業活動が属人化しており、Salesforceを導入したものの現場に定着せず、活用しきれていないという課題がありました。そこで、従来の「一気通貫型」の体制から、インサイドセールスとフィールドセールスによる「THE MODEL型分業体制」へと抜本的な改革を実行します。
単なるツールの設定にとどまらず、マニュアル整備や実際の訪問営業への同行といった現場密着の支援をすることで、データ蓄積のルーティン化に成功しました。結果として、データに基づいた再現性のある営業組織へと変革を遂げています。
シリウスビジョン株式会社様|ベテラン頼りの属人化組織からの脱却

シリウスビジョン株式会社様では、特定のベテラン社員に売上が依存しており、組織としてナレッジが共有・蓄積されていないという課題を抱えていました。そこで、弊社のコンサルタントが現場に入り込み、事業・案件・現場の声を徹底的に調査し、その上でノウハウを体系化・言語化することで「営業の型」を構築しました。
現場に寄り添った支援は高く評価され、社内アンケートでは参加者のほぼ全員が満点をつける結果となっています。単なる仕組み作りで終わらず、ノウハウが組織の「文化」として定着したことで、組織全体の底上げに成功しました。
株式会社ヤマヒロ様|アナログ管理からの脱却と営業活動の可視化

株式会社ヤマヒロ様では、顧客情報や営業活動をWordなどのアナログ形式で管理しており、情報の共有や分析ができていないという課題を抱えていました。
そこで弊社では、いきなりSalesforceを当てはめるのではなく、まずヤマヒロ様の営業の進め方や現場の実情を踏まえたうえで、Salesforceの構成を設計。支援の途中で「この形では入力が進まない」と判断した際には、すでに構築した環境をそのまま使い続けるのではなく、よりシンプルな構成に作り直す対応も行っています。
結果として、営業メンバー全員がSalesforce上に日々の活動を入力できるようになり、各担当の動きや案件の状況をリアルタイムで把握できるようになりました。営業活動が個人単位で管理されていた状態から、営業の状況を組織として共有・把握できるようになった事例です。
営業組織の改革に取り組む際の注意点

組織改革は大きなエネルギーを要する取り組みです。進め方を誤ると、改革そのものが現場の負担となり、かえって組織の停滞を招くこともあります。注意点として以下の3つを押さえておきましょう。
- 現場マネージャーに負荷を集中させない
- 自社リソースだけで完結させようとしない
- ツール導入そのものが目的にならないようにする
現場マネージャーに負荷を集中させない
産業能率大学の調査によると、上場企業の課長職の99.2%が、部下の育成と個人の業績目標を兼務する「プレイングマネージャー」であるという結果が出ています。こうした状況で、マニュアル作成やツール設定など、マネージャーが改革の実務まで背負い込むと、業務過多となり改革そのものが立ち行かなくなる可能性があります。
実際に改革を進めている企業では、マネージャーが本来注力すべき顧客対応やチームマネジメントに集中できるよう、教育設計やツール整備を担う専任の支援部隊を別に設けています。
社内リソースだけで対応が難しい場合は、外部のプロフェッショナルを活用し、マネージャーの業務の負荷を分散することで、改革を止めずに回す体制を構築できます。
自社リソースだけで完結させようとしない
ノウハウがない状態で手探りで進めると、試行錯誤に時間がかかり、競合に後れを取る可能性があります。変化の速い環境では、すべてを自前で抱えることが最適解とは限りません。
外部のプロフェッショナルを活用することで、採用・育成にかかる時間を省き、立ち上がりを一気に早めることができます。
実際に弊社が支援したSTANDARD様の事例では、依頼からわずか1週間で営業体制を構築し、初月から月150件のアポイントを獲得する「垂直立ち上げ」に成功しました。外部リソースの活用は単なる代行ではなく、事業成長を加速させるための戦略的な投資です。
外部リソースの活用や営業代行の選び方については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご参考ください。
ツール導入そのものが目的にならないようにする
「SFAを導入すること」自体がゴールになると、管理者側の都合だけが優先され、現場の負担が増えがちです。入力の手間に対して現場が価値を感じられなければ、ツールは定着しません。
本来、ツールは管理(Management)のためだけに使うものではありません。現場の判断精度や行動速度を高め、売れる状態を支えるためのセールスイネーブルメント(Enablement)の一部として機能してこそ意味があります。
入力した情報が次の打ち手や改善につながる設計があってはじめて、ツールは自然に使われ、結果として定着していきます。
Grand Centralができること
戦略を実行するリソースやノウハウが社内に不足している場合、外部のプロフェッショナルを活用するのも選択肢のひとつです。Grand Centralは、貴社の「営業戦略室」として組織改革に伴走します。
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Grand Centralが提供するセールスイネーブルメントとは

私たちが提供するのは、単発の研修ではありません。営業組織に所属する「全員」が継続的に成果を出し続けるための「仕組み(Enablement)」を組織に実装する総合的なコンサルティングです。
「営業スキルの属人化」や「新人育成の遅れ」といった課題解決を支援します。コンサルティング、トレーニング、客観的アセスメントを組み合わせ、トップセールスに依存しない強い組織を構築します。
Grand Centralならではの3つの特徴
Grand Centralが提供する価値の特徴を紹介します。
1. 戦略設計から伴走するコンサルティング
単に研修をおこなうのではなく、経営層や現場へのヒアリングを通じて営業課題を抽出します。「どの市場を狙うか」「どのようなプロセスで成果を出すか」という戦略を設計した上で、実行フェーズまで伴走し、再現性のある営業モデルを構築します。
2. 平均値を底上げするコーチング研修
キーエンスなどのトップセールス経験者が講師となり、テレアポ・商談・クロージングといった現場直結のスキルを指導します。貴社の課題に合わせた完全オーダーメイドのカリキュラムで、一部のエースに頼るのではなく「組織全体の平均点」を底上げします。
3. 客観的に可視化するアセスメント
商談の進め方を第三者視点で分析し、「ヒアリング力」「提案力」「クロージング力」などを数値化・可視化します。個々の強み・弱みが明確になるため、感覚的な指導ではなく、データに基づいた的確な育成が可能になります。
まとめ

営業組織の改革を成功させるには、個人の力に頼るのではなく、組織全体で成果を出し続けるための仕組み化への転換が不可欠です。この記事で解説した「失敗しないための5つのステップ」や「成功事例」を参考に、まずは自社の現状と課題を客観的に把握することから始めましょう。
以下の資料では、改革を進める上で直面しがちなリソース不足やノウハウ不足といった課題に対して、Grand Centralがどのように解決策を提供できるのかを具体的にまとめています。外部パートナーの選定や、具体的な施策を検討する際の比較材料としてご活用ください。
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